写真上は雲南北部のシャングリラの草原で放牧された家畜ヤク。写真下はヤクの毛で作られたテント。テントの左横の黒いかたまりはヤク。テントから人が出てきている様子。(シャングリラから車で30分、標高4000メートル付近の白馬雪山の峠を抜ける付近にて撮影)
【村ごとに違う顔】
さらにインド系牛についてミトコンドリアDNAの解析を行ったところ、アジア地域ではZ1型と呼ばれるグループが過半を占めるなか、ヒマラヤ山脈を中心とした南西中国やブータン、ネパールなどは、別のタイプのZ2型を示したといいます。
このように一般的な牛だけでも、雲南は境界地域だということがわかってきました。雲南の村々で見る牛が、村ごとに本当に様々な毛色、顔、雰囲気を持っているなあ、と感じていた私の感慨も、あながち見当はずれではなかったのです。
政府もこのことに気づき、雲南省農業庁は、他とはかなり違う牛を集めて「雲南6大銘牛」と認定し、その希少性の保護と新たな開発に乗り出しました
(2011年10月17日新聞発表。ほかに6大銘豚、6大銘羊、6大銘鶏、6大銘魚もつくった)
チベット族のヤク(牦牛)、独龍族のミタン、水牛2種、黄牛(一般的な牛の分類に入るもの)2種です。
【チベット族のヤク】
一つずつ解説しましょう。まずはヤク。
ヤク(牦牛)は、家畜牛とは違う系統で、バイソンと同系統の寒さに強い牛です。中国ではチベット自治区と青海省、雲南の北西部にいます。
4000~6000メートル級の空気が薄く、極寒の地に住む人々にとっては、本当に欠かせない大切な動物です。長くて黒くて丈夫な毛は編み込まれて、大事な居住用のテントの布地やロープとなります。けぶる白い霧にぼやっと浮かび上がる鋭角な黒々としたテント。その寒さの中で家族単位でヤクを放牧して暮らしているのです。毛皮としても使います。
乳は飲用や、バター茶にかかせないバターを生み、最後には肉も与えてくれます。
長くて白くてふさふさしたしっぽはチベット仏教寺院ではほっす(払子)として使われていました。角も仏具の装飾や門に飾られ、役割を果たしていました。
糞は燃料にもなります。
私は見てはいないのですが輸送や農耕時の役畜としても使われるそうです。
ヤクさえいれば生活できることから「高原の船」とも称えられています。
(つづく)