写真は宿泊場所だったホテルのビーチ。写真を撮るこの一角はたいへん美しいが、木々に隠れている両サイドは海に突き出たコンクリートの堤防があり、そのサイドに柵があり、視界は完全に遮られている。海に浮かぶ白い点線部分から先はホテルの敷地でないことをあらわし、多くの観光船が止まっている。ビーチは表面は白い砂だが、その下はコンクリートで固められ、砂を掘ってお城などを作ることは不可能。毎朝、従業員がビーチを掃き清め、白砂が均等に覆うように工夫を凝らしている。
【語学学校とリゾートホテルの共生】
行ってわかったのですが、私の通った語学学校もホテルもオーナーは韓国人でした。だからホテルのあらゆるところにハングル文字が躍っていたのです。ホテルは上の階(8,9階)が学校の宿舎、下の階(1から7階と10階)は普通にホテルとして営業していて、宿泊者の9割方は韓国人でした。
一方、学生は韓国人5割、日本人、台湾人がそれぞれ2割、あとはモンゴル人、ベトナム人など。学生同士は国を越えて友情もはぐくまれていて、当然、学校もそのように環境を整えていました。
さて、一般の宿泊者向けの下の階の部屋をたまたまのぞいたとき、私たちとは違って調度類も少し上等でテレビもありました。
客の大半はリゾートのためなので彼らは、なにはともあれプールに直行します。韓国の人は美肌が重要なため、当たり前のように上から下までスエットスーツのような肌を出さない水着です。暑そうです。エレベータではびしょぬれのお客さんにもよく合いました。お互いに存在を見ないようにみる、という不思議な空間になっていました。
ちなみにホテルはリゾートホテルとして営業しているので、プールの他に目の前に小さいながらもビーチがついています。生徒の特権はそれらを自由に使えること。さきに書いたようにトレーニングジムもついています。冷房付きの部屋です。
いっけん夢のような話なのですが、プールの水は毎朝、作業員が網で目に見えるゴミを取っているだけのように見え、そのために男性はしょっちゅう泳ぎに行っているのですが、女性は一度,入ってみた後は、ほとんど入らなくなるのが常でした。
ビーチはといえば、インスタ映えする空間があり、そこだけ、従業員が白い砂を一生懸命に寄せています。中央には「I ❤ EGI」(EGIはホテル名)という文字をかたどったコンクリートのモニュメントもあり、気分も高揚しそうなものなのですが、ビーチの空間は10メートルもないくらい。お隣のホテルのビーチに入れないようにコンクリートの壁があって、風情もいまいち。眺望も目の前のみ。
セブ島の海はこのようにすべてなんらかの私有地となっていて、公共の空間としての美しいビーチは存在しないのです。フィリピン人の先生に聞くと、当然ながら,漁師以外の人は海で泳いだ経験はなく、海を見てぼーっとする経験もなし。セブ島は悲しいかな、公共空間の概念が驚くほど希薄なのでした。
(つづく)