【ボホール島の人々の暮らし】
ホテルの敷地を出て、何の変哲もない原っぱを歩いていると伝統的な高床式の住宅が立ち並ぶ集落がありました。竹を編んだ壁は見事な模様をなし、カラフルなトタン屋根の建物は遠目にみるとパッチワークのようです(セブ、ボホールの海域は台風が来ない地域なので、このつくりで十分なのだそうです。)家の前にはバイクと船が置かれています。
ここでも、やはり漂ってくるのはビニールを燃やす臭い。フィリピン人の先生からお年寄りがビニールゴミだと火力が強いので煮炊きに使うのだ、と聞いていたのですが、ただただ純粋に燃やしているだけでした。ダイオキシンが心配です。
燃え切ったゴミ山の上には小さなヤシの木が生えていました。
大きなたらいで洗濯する女性を見かけました。洗濯板は日本のように凸凹ではなく、まな板のようにまっすぐです。リズムよく泡立てて汚れを落としていきます。脱水も一つ一つ手で絞ります。雲南では私も当初、手洗いしていましたが、脱水がなにより大変でした。これを毎日、やっているのです。尊敬の念が自然と沸いてきます。それにしても、このたらいが語学学校の宿舎周辺に売られていたら、もっとゆったりシャワータイムが過ごせたのになあ。
さらに家の前にある共同炊事場のようなところでは、数家族が合同で煮炊きしていました。なんだかとても楽しそうです。
その炊事場の前の広場には地鶏が一羽ごとに日よけ用の古タイヤで作られた(器用な編み込みの壁付きの)小屋を持ち、1メートルほどのひもにつながれていました。その奥には竹で作られた高床式の集合式の大きな鳥小屋があります。昼用と夜用の鳥小屋を持つ鶏なんて、日本では聞いたことがありません。とても大事に飼われているようです。
聞くと、フィリピンでは食用はもちろん、闘鶏も人気なのだそう。鶏の小屋が尋常でないほど丁寧なのは、その伝統もあるのでしょう。でも、この鶏は食用でしょう。見るからにおいしそうです。
雲南では、鶏はここボホール島で見かけたようなきらきら光る茶色に濃い緑の羽を持つ鶏は高値で売られていました。春節のころ人々はこれを生きたまま買って、家で羽をむしって捌きます。私はさばいてもらったものを買っていましたが、味が濃く、スープに入れると歴然と差が出ます。肉質は固く引き締まっていました。
よく見ると、ここにいる鶏は色も尾羽の長さもバラバラです。いくつもの系統がまじりあってしまっているのでしょうか。
カンカン照りの草原に悲しい目をした白馬が一頭、草を食んでいました。ボホール島ではプライベートの敷地で乗馬体験できるツアーもあるので、そのための馬なのでしょうか? 農耕用にしてはほっそりしています。
その横では木の棒を持った小学生ぐらいの子供が3人。チャンバラかなあ、とみていたのですが、何かを捕ろうとしているようです。木の棒の先は鋭く切り取られていて竹やりの形をしています。手を振ると、元気に手を振り返してくれましたが、真剣すぎて声をかけることができませんでした。草原の先は海。たくさんのボートが停泊しています。そこからスーッと細い木船が海に漕ぎ出していきました。夫婦二人で魚を捕りにいくようです。手漕ぎ船です。こちらも手を振ると、きげんよく手を振り返してくれました。
(つづく)