写真は現在、ポサーダとして利用されているロイオス修道院のすぐ脇を囲む城壁。「紀元前57年に共和制ローマ支配下に入って以降、エヴォラの街は2重の城壁を持った街として発展(ウィキペディア「エヴォラ」より)」したが、その内壁にあたる。高さ5メートル以上はあろうが、ロイオス修道院側からはテラス程度の高さである。どれほど高低差がある街かがわかるだろう。
【重いスーツケース】
昼過ぎに元修道院を改装したポサーダから、お値段がリーズナブルな宿にお引越し(今までも旅代は完全自腹なのですが、団体から外れると旅程を自分で組み立てることができるので)。地図上では小道をたどれば徒歩5分くらい、直線距離で300メートルもない近場です。移動は楽勝でしょう。
プチホテルのソラール・デ・モンファリムは『地球の歩き方』に
「16世紀に建てられた貴族の屋敷を改装し、1892年に創業。クラシックなサロン、おしゃれなインテリアの客室など、優雅な気分も味わえる。朝食もおいしい。」と絶賛されており、楽しみにしていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/e0/51eb9903ef3fcab16e90ed0af6fd8bda.jpg)
エヴォラ旧市街の道。城壁に沿って、扇状に道ができているので、まっすぐな道はほどんどない。
ところがスーツケースをゴロゴロさせての移動のため、思った以上に曲がりくねった小道と急な石畳の上り下りに手こずりホテルは見えども近づけず。ネコが見つめるのみの静かな裏道を通って、やっと屋敷の門に到着。ほっとして門をくぐると50段はあろうかという急な階段が立ちふさがっていました。
「貴族は高台を好むのだった・・・。」
すでに力尽き、自分の力だけでは運べない、と娘と荷物を門前に残し、身一つで階段を上がってフロントへ。
まだチェックインには早いのか内部は暗く、フロントに人影はありません。
「すみませーん」
とつぶやきながら奥に回ると、若い女性が本を読んでいました。さっそく
「今日、宿泊予約を入れたものです。荷物は今、下にあります。」
と声をかけると、亜麻色の髪をした真面目そうな女性は、目を上げてしばし観察。そして静かに
「では受付をするので、上がってきてください」
と無情の一言を発したのでした。
仕方なく、腰をかばいながらようやく荷物をあげて、暗い食堂の片隅でチェックイン。すぐに部屋に案内されましたが、これまた平坦な道のりではなく、曲がりくねった廊下と段差と階段のオンパレード。しかも狭い。そしてさも当然のように彼女は先導するのみ。貴族の館は従者がいてこその住まいで、宿の人が協力的ではないと、なかなか厳しいのだと痛感。
屋敷の角部屋につくと、建付けの悪い古い木の扉を大きな鉄の鍵でガチャガチャと回し開けて、すぐに宿の人は去っていっていきました。
部屋は、さすがの眺望で、室内はこざっぱり。ちょっとおしゃれな風呂も洗面台もついていて、レトロなフランス映画に出てきそう。
フロント近くには談話室があって、夜になると暖炉と明かりがついてくつろぐこともできました。その日の宿泊客は私たちのみで、他の客と談話することはなかったのですが。
荷物のことをのぞけば、居心地はよかったです。
(チェックアウト時は、タクシーの運転手さんにお願いして荷物を運んでもらいました。)
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写真はソラール・ド・モンファリムの談話室。