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タイ族の棟上げ式にて(シーサンパンナ州景洪にて)
伝統的な竹で編んだちゃぶ台風テーブルにタイ族のおばあさんが中心になって作った料理がずらり
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あっという間になくなった最初の料理が、牛の生肉料理だった(手前右の赤い皿)。
【周辺国に残った生肉料理・ユッケとラープ】
一方で、周辺民族に牛の生肉料理は拡散し、残りました。
たとえば朝鮮のユッケ。
生の牛挽肉に各種調味料を和え、上に生卵の黄身をのせたもの。これは中国大陸から生肉文化が消えつつあった高麗時代後期(918年~1392年)当時、大陸を支配していたモンゴル族の往来によって伝播したそうです。
(『「食」の図書館 牛肉の歴史』ローナ・ピアッティ=ファーネル著、富永佐知子訳、2014年12月、原書房,[ はい、こちらユッケです。] 古口拓也、2001年http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/LecRep/01/IntroHum/yukke.htm)
そしてタイ族。
現代の東南アジアのタイ東北部でも祝い膳にかかせないものに牛の生肉料理「ラープ」があります。
生の牛小間切れと唐辛子、ナンプラー、ミント、そこに生き血と緑色の苦い胆汁を入れたもの。
(森本薫子『タイの田舎で嫁になる』株式会社めこん、2013年5月。著者は「おいしい」と感想を述べるものの、「すぐにおしりから寄生虫が出てきてしまう」ので、最近は食べないようにしているそうだ。)
シーサンパンナでコウケンテツ氏が食べたものとほぼ同じですね。
そして、生牛肉は繊細な味と舌触りがすばらしいのですが、一歩間違えると、危険ゾーンに突入してしまう、あやうい魅力を秘めた料理なのです。
(私もユッケは大好物です。でも昔から祖母は「危ないから食べるな」と言っていました。理性的に考えると食べないほうがよいのでしょう。でもおいしいものはおいしい。
日本の行政もユッケを一律、禁止するのではなく、材料の選別や作業手順のずさんな店を摘発するほうに力点を置いてほしいものです)
ちなみにこれらの牛の生肉料理は徹底的に脂身を取り除きます。お弁当に牛肉料理を入れるとわかりますが、牛のあぶらは、冷えると白く固まって食べにくいからです。
(つづく)