(注)HP「中東と石油」の「BP統計シリーズ」で2008年最新版をご覧いただけます。
(前回までの内容)
(第4回) 2004年の地域別石油エネルギーバランス
既述の地域別石油生産量及び消費量に基づき地域別の生産量と消費量のバランスを示したものが上図である。 図の左半分は地域内の生産量よりも消費量が多い地域を示し、一方右半分の地域は地域内の生産量が消費量を上回る地域である。地域内の各国間で石油の融通(輸出入)があるが、マクロ的に見ると、図の左半分の地域、即ちアジア・大洋州、北米及びヨーロッパ・中央アジアの3地域は図の右半分の地域(中南米、アフリカ及び中東3地域)から石油を輸入していると言えよう。
このうちヨーロッパ・中央アジア及び中南米地域はほぼ地域内で生産と消費のバランスが取れている。このようにして見ると、アジア・大洋州と北米地域で不足する石油がアフリカ及び中東地域から供給されていると言えよう。特にアジア・大洋州地域については生産量が800万B/Dに対し消費量は2,300万B/Dであり1,500万B/D以上の石油が不足している。この地域には石油を産出しない工業先進国の日本、韓国、台湾のほか、石油を産出するが産業が急速に発展しつつある中国やインドのような石油の大消費国があり、大幅な石油不足の状態にある。また北米地域も石油浪費型社会の米国が石油不足の原因となっている。
これに対して中東地域は2,500万B/D弱の生産量を誇りながら消費量は500万B/Dにすぎず、2千万B/D近くの輸出余力を有している。またアフリカ地区も消費量は生産量の3分の1以下であるため700万B/D近い輸出余力がある。地球規模で見た場合、中東及びアフリカ地域の石油がアジア・大洋州と北米地域に供給されていることになる。
但しここで忘れてはならないのは中東、アフリカ、中南米の各地域の石油が余剰であるとは言え、これは地域内で石油が融通されてバランスされたうえでの結果であることを意味しない。むしろその逆で地域内の少数の産油国が高価格でも購買余力のある地域外の工業国へ石油を輸出して莫大な利潤を得る一方、地域の大多数の非産油国は高価な石油を輸入する余力がないため、ますます窮乏化していると考えられる。アフリカはその典型的な例であり、域内各国の貧富の格差は急速に拡大しているのである。
次にいくつかの国について生産量と消費量のバランスを見てみる。ここでは先進国G8のうち自国でかなりの量の石油を産出する米英2カ国を取り上げ、またBRICsと呼ばれる新興国家群のブラジル、ロシア、インド、中国4カ国の計6カ国を取り上げる。下表はこれら6カ国の石油の生産と消費のバランスを示したものである。
(単位:千B/D)
生産量 消費量 バランス
米国 7,241 20,517 -13,276
中国 3,490 6,684 -3,194
インド 819 2,555 -1,736
ブラジル 1,542 1,830 -288
英国 2,029 1,756 273
ロシア 9,285 2,574 6,711
米国は生産量724万B/Dに対しその3倍近い2,050万B/Dもの石油を消費している。生産量は世界的に見てトップクラスであるにもかかわらず、世界全体の4分の1の石油を消費する(既述の表3を参照)いわゆる「石油がぶ飲み」体質にあり自給率は4割弱である。
中国及びインドも自国の石油生産では不足し多量の石油を輸入しなければならない状況にある。自給率で見ると、中国は52%でかろうじて半量を自国産石油で賄っているが、インドの場合は自給率32%であり輸入依存度は米国よりも高い。
一方、ブラジル及び英国は生産と消費がほぼバランスしている。これに対してロシアは生産量930万B/Dに対して消費量は260万B/Dであり670万B/Dの輸出余力がある。
このように地域或いは国単位で石油のバランス見ると現行の生産レベルでも輸出余力があるのは、中東及びアフリカの産油国とロシアである。最近話題になる「オイル・ピーク論」は端的に言えば石油消費量の増加ペースが油田開発投資による新規埋蔵量発見のペースを上回る状況を危惧したものである。しかし油田開発投資が生産量の増加を実現するまでにはかなりの年月を必要とするの。その意味では現在の生産水準で輸出余力を有する中東、アフリカの産油国及びロシアが、当面の石油需給の命運を握っていると言って差し支えないであろう。
しかしこれらの国々は、日本、欧米など石油の輸入依存度が高い国々とは宗教、歴史、民族を含めた社会の状況が大きく異なるため、折に触れて様々な政治的リスクが発生しており、これが需給バランスの問題を一層複雑にしていると言えよう。