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(BP統計:BP Statistical Review of World Energy June 2005)
(前回までの内容)
(第1回) 2004年の全世界、地域別および国別石油埋蔵量
(第2回) 2004年の地域別及び国別石油生産量
(第3回) 2004年の国別石油消費量
(第4回) 2004年の地域別石油エネルギーバランス
第5回 石油価格と消費量、生産量及び埋蔵量の推移
これまでに2004年現在の埋蔵量、生産量、消費量及びそのバランスを概観したが、ここでは第二次オイルショック(1978年)直前から2004年までの石油の価格、消費量、生産量および埋蔵量の推移を概観する。上図はBP統計による1976年から2004年までの石油価格(WTI原油価格)、各年の年間消費量・生産量及び1980~2004年の各年末の石油埋蔵量の推移をプロットしたものである。上図からは価格、消費量、生産量及び埋蔵量それぞれの推移及び相互の関連性について以下のような特徴を読み取ることができる。
(1)原油価格が長期低迷傾向にあったこと WTI原油価格(図の右目盛り、ドル/bbl)は1978年の第二次オイルショック直前に10ドル台前半であったが、1980年には40ドル近くまで急上昇した。その後再び下落し1986年(平均15ドル)以降1999年(同19ドル)まで長期にわたり20ドル台前後に低迷している。そして2000年には再度上昇に転じ、2002年(平均26ドル)からは急騰、2004年の年間平均価格は41ドルに達した。この時点ではじめて1980年(38ドル)の水準を24年ぶりに突破したのである。(因みにその後2005年8月には70ドル近くまで上昇しており、現在も60ドル台である。)
(2)生産量及び消費量は1984年以降、価格の上下に関係なく一貫して漸増傾向にあること第二次オイルショック直後の1979年に65百万B/Dであった生産量及び消費量は、1983年には56百万B/Dまで落ち込んだ。しかしその後は一貫して増加傾向にあり、特に1998年から価格が急激に上昇したにもかかわらず、石油の消費量・生産量は増勢を維持している。これは石油に対抗できる有力な代替商品がないためである。一般的な商品では価格が急騰すれば消費の抑制が起こり代替商品の出現により生産が縮小するのが普通であるが、石油はその点、価格が上昇しても生産及び消費に影響しないと言う特異な傾向を示している。
(3)各年の生産量と消費量はほぼ同じであること各年の生産量と消費量はほぼ同じであり、見かけ上の需給ギャップはない。これは価格が下落している時期と、その逆に上昇している時期の双方で言えることであるが両者の性格は異なっている。即ち価格低迷期にはOPECは生産制限の措置をとり、需要に直結した生産調整が行われた。更に石油はその商品の性格上、在庫備蓄に適さず(日米など一部の戦略的備蓄は例外)、機動的な販売体制を取り難く、一方では油井バルブの一時的な閉鎖により生産調整が容易である。これに対して景気の拡大等により石油の消費量が急増しても、油田の生産余力が直ちに増産には結びつかないため供給不足に陥る。2004年以降は短期的な余剰生産能力も限界に達し、供給不足が一層強くなっている。
このように需要減退期=価格低迷期には生産量が速やかに削減される一方(石油供給の下方弾力性)、需要増加=価格上昇局面でも供給不足に陥る(石油供給の上方硬直性)があるため、常に供給サイドが主導権を握ることになる。これが結果的に生産量と消費量を一致させているのである。
(4)確認可採埋蔵量の増加が拡大期と停滞期の繰り返しの様相を有していること BP統計の1980年~2004年までの25年間の埋蔵量の変化を見ると、80~89年までは埋蔵量が急拡大している。そして90~95年までは停滞し、その後2002年まで増加を続けた後、2003年以降は停滞し、埋蔵量は1兆2千億バレル台で伸び悩んでいる。
確認可採埋蔵量の増加は探鉱技術の向上による新規油田発見、或いは掘削技術の向上による既存油田の回収率アップ、深海底油田の開発等、近年の技術革新によるところが大きい。しかしこれらの技術を適用するためには多額の投資が必要であり、従って石油価格が十分に高い水準にあることが必須条件である。このため埋蔵量を増加するための投資活動は石油価格の上昇期に集中(或いは限定)される。
しかし投資が埋蔵量の増加に結びつくにはかなりのタイムラグがある。1978年の第二次オイルショックにより石油価格が急上昇した時に盛んな投資活動が行われたが、その結果が埋蔵量の増加に反映されるのは図5でわかるとおり80年台後半である。2003年以降に埋蔵量の増加が停滞しているのは、90年代の石油価格が低迷し十分な投資がなされなかったことが最大の要因である。2002年以降は石油価格が急上昇したため探鉱投資は再び活発になっており、数年後に埋蔵量が再度増加する可能性はあろう。