(第1回)2004年の全世界、地域別および国別埋蔵量
BP統計によれば2004年末の確認可採埋蔵量(Proved Reserve;ガス田の埋蔵量から既に生産したものを除き、今後採掘が可能な天然ガスの量、以下単に「埋蔵量」と言う)は180兆立方メートル(以下 tcm = trillion cubic meters)である。因みにこれを同年の生産量2.7兆tcmで割った数値R/P(即ち現在の生産量をあと何年続けられるかと言う数値)は、67年である。これは石油の40.5年に比べ約1.5倍であり、比較的余裕があると言える。但し、後に述べるように近年天然ガスの消費が急激に増加しておりR/Pは低下傾向にある。
下表は世界の地域別の天然ガス埋蔵量である。参考までに石油埋蔵量を併記した(石油については詳しくは「その1:石油篇」参照)。
天然ガス埋蔵量 (参考:石油埋蔵量)
兆立方米 % 億バレル %
中東 72.83 40.6% 7,339 61.7%
欧州・中央アジア 64.02 35.7% 1,392 11.7%
アジア・大洋州 14.21 7.9% 411 3.5%
アフリカ 14.06 7.8% 1,122 9.4%
北米 7.32 4.1% 610 5.1%
中南米 7.10 4.0% 1,012 8.5%
全世界合計 179.53 100.0% 11,886 100.0%
全世界の天然ガス埋蔵量は約180兆tcmであるが、最も多いのは中東地域の73兆tcmで全体の40.6%を占めている。次に多いのが欧州・中央アジア地域の64兆tcmで世界全体の35.7%である。これら二つの地域を合わせると全世界の埋蔵量の8割弱を占めている。これを石油埋蔵量と比較すると、石油の場合は中東地域が世界全体の61.7%、欧州・中央アジア地域が11.7%となっており、中東は石油の比率が高い。しかしこれら2地域を合計すると73.4%となる。つまり天然ガスも石油も世界全体の埋蔵量の7~8割がこれらの地域に集中していることがわかる。
天然ガスは比重の軽いメタンが主な成分であり、これに対して石油はメタンより重いエタン、プロパン、ブタンなどが主な成分である。両者は同じ炭化水素資源であり地下数千メートルの高温高圧の地層内では混在しているが、常温常圧の地上に搬出された時に前者は気体、後者は液状となる。従って天然ガスと石油の埋蔵地域が欧州・中央アジアと中東という同じ地域となるのはある意味で当然のことである。欧州・中央アジア地域の炭化水素資源が比重の軽いメタン成分が多く、中東地域はメタンよりも重い成分が多いと言える。いずれにしても天然ガスと石油の二大炭化水素資源の7~8割がこの2地域に偏在していることは、世界のエネルギー問題を考える上で忘れてはならない点であろう。
*(注)因みに固体状で産出される石炭及びカナダのオイルサンド或いはベネズエラのタールサンドも同じ炭化水素資源である。
上図は天然ガス埋蔵量を国別で見たものである。ロシアは世界最大の埋蔵量を有しており全世界の埋蔵量の27%を占めている。これに続くのがイランであり世界全体の15%を占め、第3位はカタールの14%である。これら上位3カ国で世界全体の半分以上(56%)を占めており、天然ガスの埋蔵量は一部の国に偏っていることがわかる。なお石油の場合、埋蔵量上位3カ国(サウジアラビア、イラン及びイラク)はいずれも中東湾岸諸国である。またこの中東3カ国の全世界に占める石油埋蔵量の割合は43%である(「石油篇 1」参照)。両者を比べると、天然ガスの埋蔵は非中東国家であるロシアがトップであり、また天然ガス埋蔵量のビッグ・スリーが世界に占める割合(56%)は石油(43%)より更に寡占体制にある点が特徴である。なおイランとカタールのガス田はそれぞれSouth Pars及びNorth Fieldと呼ばれているが、ペルシャ湾(アラビア湾)海上に広がる同じ地層構造である。つまりこのガス田は世界全体の埋蔵量の3割を占める超巨大ガス田なのである。