石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2010年版解説シリーズ:石油篇(1)

2010-06-18 | その他

(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量と可採年数

1.2009年末の埋蔵量

 2009年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆3,331億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると(上図。なお拡大図は「地域別石油埋蔵量(2009年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-91OilReserveByRegion2.gif)、中東地域が全世界の埋蔵量の57%を占めている。これに次ぐのが中南米の15%であり、以下ヨーロッパ・ユーラシア地域、アフリカ地域が各10%、北米5%であり、最も少ないのがアジア・大洋州地域の3%である。このように世界の石油埋蔵量は圧倒的に中東地域が多い。

  昨年のBP統計では中南米は10%でありヨーロッパ・ユーラシア地域の11%より少なかったが、今回の統計では埋蔵量シェアが大幅に増えている。これはベネズエラの埋蔵量をOPEC統計の数値に置き換えた結果、同国の埋蔵量が994億バレルから1,723億バレルにほぼ倍増したからである。因みにOPEC統計ではオリノコ・ベルトの埋蔵量が加算されている 。

  次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはサウジアラビアの2,646億バレルであり、これは世界全体の20%を占めている。第二位はベネズエラ(1,723億バレル、13%)である。同国は上記のとおり統計値が大きく上方修正された結果、昨年の5位から一挙に2位に浮上している 。以下はイラン(1,376億バレル、10%)、イラク(1,150億バレル、9%)、クウェイト(1,015億バレル、8%)、UAE(978億バレル、7%)と中東産油国が続いている。これら各国の埋蔵量は08年末、09年末ともおなじである。以下ベスト・テンにはロシア、リビア、カザフスタン及びナイジェリアが入っている。これら10カ国の世界シェアの合計は81%に達する。このように石油は一部の国に偏在しているのである。(詳細は表「世界の国別可採埋蔵量(2009年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-91OilReservesByCountry2009.xps参照)

  OPECの合計埋蔵量は1兆294億バレル、世界全体の77%を占めている。次回石油篇(2)「生産量」で触れるが、OPECの生産量シェアは41%であり、埋蔵量シェアよりかなり低い。このため石油市場におけるOPECの発言力はさほど強く無いと考えられがちであるが、世界の埋蔵量の4分の3強を有するOPEC諸国の存在感は決して小さくない。

2.1980年~2009年の埋蔵量及び可採年数の推移

(図「世界の石油埋蔵量と可採年数」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-92OilProvedReservesHi.gif参照)

  1980年以降世界の石油埋蔵量は一貫して増加している。「埋蔵量」は、前年末埋蔵量 + 新規発見(又は追加)埋蔵量 - 当年中の生産量、の数式で表わされる。従って埋蔵量が増加することは新規に発見又は追加される埋蔵量が当年の生産量を上回っていることを示している。このような現象は、その年にいずれかの国で大型油田が新たに発見されたり或いは既発見油田の埋蔵量が見直された場合、もしくは世界全体の生産量が停滞した場合(即ち景気後退により世界の石油消費が低迷した場合)に起こる。

  そのような視点で見ると1980年代後半に埋蔵量が大幅に増えたのは1979年の第二次オイルショックにより石油価格が高騰したため80年代前半に石油開発に拍車がかかり、その成果が現れた結果だと考えられる。そして1990年代末以降は中国、インドなど開発途上国の経済が拡大し、それにつれて石油価格が上昇したため、メキシコ湾、ブラジル沖など深海部や中央アジアで石油の探鉱が盛んに行われた結果、埋蔵量の増加につながっている。

  可採年数(R/P)については2009年末は45.7年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。可採年数についてオイルショック直後の1980年以降の推移を見ると、1980年に29年であったものが80年代末には40年以上に伸びている。その後20年近く可採年数は40年前後で大きな変化はなかったが、2004年以降は毎年可採年数が伸びる傾向にあり、5年間で可採年数は5年増えている。

  2000年以降メキシコ湾、ブラジル沖などの深海域或いは中央アジアで新たな油田の発見が相次いだことにより埋蔵量が増加している。それに対して最近はサブプライムショック、リーマンショックなどの影響により景気が後退、石油の生産・消費が伸び悩んでいる。近年可採年数が伸びた理由はこのような埋蔵量の増加、生産・消費量の減少によるものである

(続く)

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