(注)本シリーズを「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載しました。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
石油篇(2):世界の石油生産量
(1) 地域別・国別生産量
2009年の世界の石油生産量は日量7,995万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が2,436万B/Dと最も多く全体の30%を占めている。その他の地域については欧州・ユーラシア1,770万B/D(22%)、北米1,339万B/D(17%)、アフリカ971万B/D(12%)、アジア・大洋州804万B/D(10%)、中南米676万B/D(8%)である。(グラフ「地域別石油生産量2009年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95bOilProductionByReg1.gif参照)
各地域の生産量と埋蔵量(前回参照)を比較すると、埋蔵量のシェアが生産量のシェアより高い地域は中東、中南米及びアフリカであり、北米、欧州・ユーラシア、アジア・大洋州はその逆である。例えば中東は埋蔵量では世界の57%を占めているが生産量はその半分の30%に過ぎない。中南米も埋蔵量シェア15%に対し生産量シェアは8%である。一方、北米及び欧州・ユーラシアの場合、埋蔵量シェアがそれぞれ5%、10%に対して生産量のシェアは17%及び22%である。またアジア・大洋州も生産量シェアが埋蔵量シェアを7ポイント上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東、中南米及びアフリカであることが読み取れる。
次に国別に見ると、最大の石油生産国はロシアである。同国の2009年の生産量は1,003万B/Dであり、第2位はサウジアラビア(971万B/D)であった。ロシアとサウジアラビアは世界の二大産油国であるが、ロシア成立直後の1993年から2008年までサウジアラビアが生産量世界一を続けており両国の差は一時300万B/Dを超えたこともある。しかし近年はその差が縮まり、2009年にはついにロシアがサウジアラビアを追いぬき生産量世界一となった。
両国に続くのが米国(720万B/D)、イラン(422万B/D)、中国(379万B/D)である。6位以下10位までの生産国はカナダ、メキシコ、UAE、イラク、クウェイトの各国である。イラクは前年12位であったが、他の産油国が軒並み生産量を減らす中で248万B/Dを生産し第9位にアップしている。但しこの生産量はイラク戦争前の260万B/D台に達しておらず、また過去最高の生産量を誇った1979年(349万B/D)の7割にとどまっている。昨年行われた国際入札の結果、ルメイラ油田など生産能力の高い油田の開発改修が進めばイラクの石油生産量は飛躍的に伸びるものと思われる。(表「国別石油生産量ベスト20(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-95cOilProductionByCountries(2009).xps参照)。
(2) 石油生産量の推移とOPECシェア
(上図「世界の石油生産(1965~2009年)」参照。拡大図:http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-95aOilProduction1965-1.gif)
1965年の世界の石油生産量は3,181万B/Dであったが、その後生産は急激に拡大し、1980年には6,295万B/Dとほぼ倍増した。オイルショック後の石油消費減と景気後退により1980年代に石油需要は低迷したが、1990年代に入り再び生産は右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,810万B/D)以降急激に伸び2000年に7,482万B/D、2005年は8,126万B/Dに達している。これは米国での需要が堅調であったことに加え、中国、インドの消費量が急増したことが主たる要因である。その後は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産は8,100万B/D台で停滞し、2009年はついに8千万 B/Dを割り7,995万B/Dに落ち込んでいる。
石油生産が前年比で減少したのは1980年代前半以来のことである。この停滞又は減少傾向が今後も続くかどうか分からないが、現代は地球温暖化問題が強く意識され、炭化水素エネルギー源としては天然ガス志向が高まる一方、原子力エネルギー或いは太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用が促進され、更には省エネルギー技術が期待されている。このような流れが強まれば20世紀後半のように石油が高度成長する時代の再来は難しいであろう。
石油生産を地域毎のシェアで見ると、1965年は北米が32%でもっとも多く、中東26%、欧州ユーラシア18%、中南米14%、アフリカ7%と続き、アジア・大洋州は3%であった。しかしその後北米の生産が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)が急成長したため、現在(2009年)では冒頭にも述べたとおり、中東のシェアが最も高く(30%)、次いで欧州・ユーラシア(22%)、北米(17%)となっている。最近ではアフリカの生産が伸びており、同地域のシェアは12%に拡大している。
OPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は45%であり、第一次オイルショック前には50%近くに達した。しかし80年代前半にシェアは急落し85年には30%を切った。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大して40%台を維持しており2009年は41%であった。
上図で見ると1985年は世界の生産量の落ち込みに対してOPECのシェアはそれ以上に急落するという特異な様相を見せている。これはオイルショック時の価格暴騰が引き金となって世界の石油市場で需要の減少と価格の下落が同時に発生、これに対してOPECは世界平均を上回る大幅な減産を行ったためである。
(続く)
以上
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