石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(26)

2010-11-21 | 中東諸国の動向

砂漠と海と空に消えた「ダビデの星」(2)

バーチャル管制:砂漠に消えた二番機(上)
 「我々は貴機を1機ずつエスコートしてそれぞれの着陸地に向かう。各機の着陸地点が近づいたら地上の管制官が誘導する。我々の任務はそこまでだ。」
 
 「なおこの電波を傍受した最寄りの国が貴機をイスラエル機と認識した場合、何らかの妨害行為或いは敵対行為を取る恐れがある。従って今後一切貴方からの通信は控え、黙って当方の指示に従ってもらいたい。」
 米軍パイロットは同じ言葉を二度繰り返した。その声には有無を言わせぬ力がこもっていた。
 
 「まず右翼後方の二番機。直ちにアラビア半島方向へ向かえ。」
 マフィアは言われるままゆっくり右に旋回し仲間の2機から離脱した。後方から米軍機が追いつき、並走を始めた。お互いに相手のパイロットの顔が識別できるほどの近さである。マフィアは米軍機のパイロットに向かって親指を突き上げて見せた。交信を禁じられたマフィアとしては、それは救援に感謝する意思表示であった。しかし相手のパイロットはそれに応えず操縦桿を握りしめ、少し下降してマフィア機の下に潜り込むと、何かを確認するようにマフィア機の胴体腹部を見上げた。

 パイロットはそこに何もないことを確認すると、今度はマフィア機の前に躍り出て機首を真っ直ぐアラビア半島に向け、すこしずつ高度を下げ始めた。米軍機のジェットエンジンから時折り噴き出るバーナーの炎が、<俺について来い>と言うメッセージであった。

 2機の戦闘機は今やペルシャ湾からアラビア半島に入りつつあった。眼下に停泊するコンテナ船が見え、次いでクリーク(入江)の奥の岸壁で荷役するクレーンが目に入った。その先の内陸部には高層ビルが林立する近代的な都市が広がっている。その中でひときわ目を引く超高層ビル。世界最高層のビル「ブルジュ・ハリーファ」である。周囲を圧倒してそびえたつ高さ800メートルを超えるビルは、高度を下げたマフィア機からはまるで手を伸ばせば届かんばかりの近さであった。

 (続く)

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

荒葉一也:areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

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