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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(24)

2010-11-12 | 中東諸国の動向

米軍乗り出す(4)

当初事態が理解できなかったのはイスラエルからの緊急通報を受けたペンタゴンも同じだった。イスラエルは3機の救援を米国に求めた。その時彼らは二つの事実を明らかにした。一つ目の事実。それは給油機がサウジアラビアに撃墜されたことにより3機が自力で帰還できなくなったため、やむを得ずペルシャ湾の公海上空を飛行中との事実であった。その時ペンタゴンが考えたことは3機をペルシャ湾の原子力空母の近くに不時着水させ、3名のパイロットを救出することであった。

しかしイスラエルから二つ目の事実を告げられた時、ペンタゴンは頭を抱え込んだ。3機編隊の2番機と3番機のいずれかが未使用の小型核ミサイルを抱えたまま飛行中というのがそれであった。米国は今回の作戦で核ミサイルが使われる可能性があることを知らされていなかった。目的達成のためならイスラエルは最大の盟友である米国すら欺いたのである。核ミサイル搭載機に残された燃料はあとわずか。飛行可能な時間はせいぜい1時間程度しかない。

イスラエル側は最後にもう一つ遠慮がちに米国に頼み込んだ。編隊の先頭機のパイロット一人だけでも何とか救出してほしいと。ペンタゴンは短い協議の末、直ちに現地司令部に緊急作戦を発令した。

カタールのウデイド米中央軍現地司令部は3機の戦闘機に緊急発進を命じた。イスラエル機に合流せよ、と言う命令だけが離陸前のパイロットに与えられた。その後どうするかは改めて指示するとのことで、パイロット達には状況の説明も緊急発進の理由も何一つ説明されなかった。しかし上部からの命令は絶対である。と同時にそれは兵士たちにとっても命令さえ忠実に実行すれば自らの責任を問われないことを意味する。むしろ事実を知らされてその重みに耐えられなくなったり、或いは作戦の理由を知って良心の呵責に悩むようなこともないだけパイロット自身にとっては気楽であった。

ウデイド基地を離陸して間もなく3人のパイロットに指示が出された。一人のパイロットには編隊の先頭を飛ぶ戦闘機を「ハリー・S・トルーマン」の位置まで誘導せよ、との指示が与えられた。そして残る2機には編隊の2番機及び3番機をエスコートしてアラビア半島内陸部に誘導せよ、というものであった。


(続く)


(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

荒葉一也:areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

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