石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

新たなる半世紀に踏み出したOPEC(6)

2010-12-22 | OPECの動向

(注)本シリーズはホームページ「マイ・ライブラリー」に一括掲載されています。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0166OpecNext50Years.pdf

 6.生産割当に関心の薄い国

こうして会議は大方の予想通り2008年12月総会で決定された2,485万B/D(イラクを除く)の生産枠を維持することを決定した。これで丸2年以上にわたり生産枠が変更されないことになる。このような長期間にわたり生産枠が維持されることは過去に例のないことである。

OPECを取り巻く情勢が内外ともに穏やかだったためか、今回の総会ではイラク、クウェイト、カタール及びナイジェリアの4カ国は石油相自身が出席していない。OPC総会はこれまでよほどのことが無い限り各国とも石油相自らが出席しており、今回のように4カ国の石油相が一度に欠席するのは極めて珍しい。裏を返せばこれら4カ国が今回の総会を重要視していなかった現れと言えよう。

OPEC総会と言えば常に生産枠の増減が最大の関心事とされてきた。実際半世紀にわたるOPECの歴史の後半は生産割当の問題だったと言って過言ではない。OPEC各国はいずれも国家歳入の殆どを石油の輸出に依存しており、その点では自国の生産割当量が財政に大きく影響するのは事実である。しかし加盟国の中には自国の割当量に過敏な国とそうでない国がある。

割当量に過敏なのは人口が多く石油収入の水準を切り下げることが難しいイラン、イラク、ナイジェリアなどの国々である。一方、OPEC加盟国の中でも人口が少ないクウェイト、カタール、UAEなどは原油の輸出量が増えても減っても国民生活に対する影響はさほど大きくはない。これらの国々にはもともと十分すぎるほどの石油収入があり、輸出の増減による歳入の増減は国庫余剰金の増減として反映されるに過ぎない。従ってこれらの国々は生産割当量に対する執着心が少ないと考えられる。このような点を考慮すると、今回の総会でクウェイトとカタールの石油相が出席しなかった理由が理解できる。

特にカタールの場合は既にLNG輸出による収入が石油のそれを上回っており、将来さらにその差は広がる見込みである。LNGの安定した販路と価格を如何に確保するかが今後のカタールの関心事であろう。OPEC加盟国の中でも天然ガス資源を豊富に持っている国、即ちガス・リッチな国は石油収入にこだわらないため、生産割当にさほど執着しなくてすむと考えられる。

このようにカタールを含め、クウェイト、UAEなど人口が少ない国は、OPEC総会における生産割当の議論に余り強い関心がないのは間違いない。彼らが恐れているのは石油需給がひっ迫し、或いは石油価格が急騰した時、消費国特に欧米先進国から直接自国に増産圧力がかかることである。その圧力をかわす隠れ蓑としてOPECは重宝しているのである。彼らは生産割当を巡りイランとイラクがつばぜり合いをしているのを横目に鷹揚に構えているのである。

(続く)

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12月11日、エクアドルの首都キトーでOPEC総会が開かれた。原油価格は90ドル(バレル当たり)に達し、来年には100ドルを突破すると予測する見解も少なくない 。先進国の景気が低迷しており、総会前日に発表されたIEAの来年の石油需要予測も微増にとどまっていることもあり 、総会前のOPEC各国石油相はいずれも現状維持の姿勢を崩さなかった。
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