石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇(14完)

2018-10-04 | BP統計

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0452BpOilGas2018.pdf

 

(2007年を底に急速に改善する米国のエネルギー自給率!)

(6)米国の石油・天然ガス自給率の超長期推移(1980~2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-3-G06.pdf 参照)

 米国の石油・天然ガスの需給ギャップが近年急速に改善しつつあることについては既に石油篇、天然ガス篇及び前項でも触れたが、本項では改めて1980年から2017年までの40年間近くにわたる石油と天然ガス並びに両者を合わせた自給率の推移を検証する。

 

 まず石油については1980年は生産量1,017万B/Dに対し消費量は1,706万B/Dであり自給率は60%であった。つまり米国は必要な石油の6割を自国産で賄っていたことになる。1980年代前半は生産が1千万B/Dを超える水準で推移する一方、消費は1,500万B/D台に減少した結果、自給率は67%まで回復した。ただその後は海外の安価な石油に押され生産は減少の一途をたどり2005年から2007年までの3年間の自給率は33%に落ち込んだ。この時、米国は必要な石油の3分の1しか自給できなかったのである。

 

 しかし2000年初めから石油価格が急上昇し、米国内で石油増産の機運が生まれ、同時にシェール層から石油を商業生産する方法が確立し、2008年以降石油の生産量は大幅に増えた。反面、景気の後退により消費量が漸減した結果、2017年は石油生産量1,306万B/D、消費量1,988万B/Dで自給率は66%に達している。

 

 次に天然ガスを見ると、1980年代前半の自給率は100%に近く、ほぼ完全自給体制だった。80年代後半以降は生産が伸び悩む半面、消費が増加したため、自給率は漸減の傾向を示し、1992年には自給率が90%を割り、2003年には82%まで低下、需要の約2割を隣国カナダからの輸入に依存することになった。しかしその後シェールガスの開発生産が本格化するに伴い生産量は急激に拡大し、2017年の自給率は99%と完全自給体制を整えている。昨年にはLNG輸出が開始され、今後本格的な天然ガス輸出国になろうとしている。

 

 石油と天然ガスを合わせた自給率は1980年に73%であった。1984年には78%まで回復したが1985年以降は長期低落傾向となり、2005年の自給率は49%まで落ち込んだ。しかしその後は急速に回復、2017年の自給率は79%と1980年台前半の水準に戻っている。因みに2017年の石油・天然ガスの合計生産量は石油換算で2,572万B/D、また合計消費量は同石油換算で3,262万B/Dである。需給ギャップが7百万B/D弱あるものの、シェールガス及びシェールオイルの増産は今後も続くものと見られ、エネルギーについては米国の将来は極めて明るいと言えよう。

 

(石油+天然ガス篇 完)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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