石油と中東

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メジャーズを凌駕するENEOSと出光興産の利益率:2020年7-9月期業績比較(2)

2020-11-27 | 今日のニュース
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0519MajorEneosIdemitu2020JulSep.pdf

1.2020年7-9月期業績比較(表http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-26.pdf参照)
(ExxonMobilの売上高はENEOSの2.7倍!)
(1) 売上高 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-10.pdf 参照)
2020年7-9月期のENEOSの売上高は1兆8,161億円、出光は1兆329億円であった。これをENEOSは1ドル=107円、出光は1ドル=106.9円で換算すると(換算レートは各社の決算説明資料から引用、以下同様)、ENEOSは170億ドル、出光は97億ドルとなる。
メジャーズを凌駕するENEOSと出光興産の利益率:2020年7-9月期業績比較(2)

これに対してメジャーズ5社の同期間の売上高は最も多いExxonMobilが462億ドル、ついでShell 447億ドル、BP 443億ドル、Total 331億ドル、Chevron 245億ドルである。ENEOSはExxonMobil、Shell或いはBPの4割弱であり、メジャーで最も少ないChevronの7割である。出光は比較した6社の中では唯一100億ドルを下回っており、ExxonMobilなど上位3社の2割強である。

(Shellと肩を並べる出光の利益、メジャー3社が赤字の中でENEOSも利益計上!)
(2) 純利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-11.pdf 参照)
 今期はメジャー5社のうち3社が赤字であったが、これに対して邦系2社はいずれも利益を計上している。即ちExxonMobil、BP及びChevronはそれぞれ▲7億ドル、▲5億ドル及び▲2億ドルの欠損であり、残るShellとTotalはそれぞれ5億ドル及び2億ドルの黒字であった。これに対して出光は5億ドル、ENEOSも4億ドルの利益を計上しており、邦系2社を上回る利益を計上したのはShell1社のみである。

7社はいずれも前期(4-6月期)は赤字であったがENEOS、出光を含む4社は黒字に転換している。前期は油価が大幅に下落し、またコロナ禍の影響で需要が大きく落ち込み、メジャーズ5社は価格と需要の両面で大きな痛手を被った。これに対して今期は油価、需要ともに若干改善している。このような中でENEOS及び出光がメジャー4社を上回る改善を見せたのは、ガソリンなどの製品価格を原油価格に連動させる製品価格決定方式に助けられた面が大きい。上流部門(石油・ガスの開発生産)の売上がメジャーズに比べ極端に少ない邦系2社は下流部門(精製・販売)の収益力が業績を左右するのである。

(7社中利益率が1位と2位の出光とENEOS!)
(3) 売上高利益率 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-12.pdf 参照)
 売上高利益率を比べてみると、最も低いのはExxonMobilの▲1.5%であり、BP▲1.0%、Chevron▲0.8%である。ShellとTotalはそれぞれ1.1%、0.6%のプラスであった。これに対してENEOSは2.2%の利益率であり、出光はこれら6社を大きく上回る4.8%の利益率を達成している。利益率は必ずしも高いとは言えないが、出光とENEOSがメジャーズ5社を上回っているのは特筆すべきことと言えよう。

(4) 上流部門の利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-13.pdf 参照)
上流部門ではBPが9億ドル、Total 8億ドル、Chevron 2億ドルの利益を計上したが、Shell及びExxonMobilはそれぞれ▲11億ドル、▲4億ドルの損失であった。これに対してENEOS及び出光は利益を計上しているものの金額は小さくENEOS は8百万ドル(8.4億円)、出光は4百万ドル(4.1億円 )である。

(5) 下流部門の利益 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-14.pdf 参照)
メジャーズの下流部門損益は厳しく5社中3社が欠損となり、利益を計上したのはShellとBPの2社にとどまっている(Shell 21億ドル、BP 6億ドル)。これに対しENEOS及び出光の上流部門はそれぞれ4億ドル及び7億ドルの利益であった。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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