本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。
因みにS&Pの格付けは最上位のAAA(トリプルA)から最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.(No Rating)と表示される。
S&P(日本)ホームページ:
1.2025年1月現在の主要国の格付け状況
(G7で格差、トリプルAの独、カナダ、BBBのイタリア、日本はA+)
(1)AAA(トリプルA)、AA及びA
2025年1月現在、S&Pの最高格付け「AAA(トリプルA)」を得ているのは、G7ではドイツ及びカナダの2か国であり、その他ヨーロッパではスイス、ノルウェー、オランダなどである。またアジア・オセアニア地域ではシンガポール及びオーストラリアがAAAである。中東、アフリカ、南米地域では「AAA」の格付け国は無い。
「トリプルA」に次ぐ「AA」の格付けを見ると、米国、英国及びフランスが「AA」格付けを得ている。但し「AA」の格付けには「AA+(プラス)」、「AA」、「AA-(マイナス)」の3段階があり、米国は「AA+」、英国「AA」、フランス「AA-」であり、3カ国の間に格差がある。アジア地域では香港、台湾が米国と同じ「AA+」であり、韓国は英国と並ぶ「AA」格付けである。後述するように日本及び中国はこれら3か国より2~3ランク低い「A+(プラス)」の評価であり、極東諸国間にも格付け格差がある。中東地域のアブダビ(UAE)及びカタールは英国、韓国と同じ「AA」に格付けされ、中東諸国の中では最も高い。
格付け「A」の国は日本及び中国が「A+」であり、上記の通り台湾、韓国と格差がある。中東のクウェイトは同じ「A+」である。ヨーロッパのスペイン、中東のサウジアラビア及びイスラエルなどが「A」格付けである。
(2)BBB(トリプルB)
「BBB」はS&Pが投資適格としている最も低いランクである。この格付けにはタイ、フィリピン及びメキシコなどが「BBB+」に格付けされており、G7国ではイタリアが「BBB」である。またインドネシアもイタリアと同じ「BBB」とされ、「BBB-」にはアジアではインド、西欧ではギリシャがこの格付けである。
(続く)
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[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。
[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。