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第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(19)
186 シリア情勢:敵の敵は味方か敵か?(3/5)
これら多種多様な勢力に対して外国勢も肩入れの仕方が猫の目のように変わる。米国は反政府勢力の中のリベラル民主勢力であるシリア民主軍を応援するため武器を供給し軍事訓練を行おうとした。しかし西欧的民主主義イデオロギーが希薄な中東では、リベラル勢力はひ弱で武器や資金援助も結局砂漠に水を撒くように雲散霧消している。
サウジアラビアなど湾岸の世俗君主制国家もシリア民主軍に肩入れするが、こちらは消去法での支援選択である。つまりGCC諸国はヌスラ戦線やIS(イスラム国)のようなサラフィー主義(イスラム過激主義)は自分たちの体制を危うくするが、イランの支援を受けるシリア政府はもっと受け入れがたい。本音ではリベラル勢力を警戒しているが、欧米と歩調を合わせておけば絶対君主体制はひとまず安泰であるため、消去法の選択肢としてシリア民主軍に賭けているのである。しかし欧米の武器支援と湾岸諸国の経済支援を受けているにもかかわらずシリア民主軍の実戦能力は他の反政府勢力と比べて格段に劣っており、彼らは自分たちの身を守るだけで精一杯である。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
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