(英語版)
(アラビア語版)
2023年3月
Part III:キメラ(Chimera)
78. NEOギャラクシーの地球上陸(4)
故国に帰ると今度は仲間のパイロット達が胡散臭い目で彼を眺め、誰も彼に近寄ろうとしなくなった。しかし彼に反感を抱く者がすれ違いざま聞えよがしに言う言葉が彼の胸に突き刺さった。
「仲間二人を見殺しにしてよくおめおめと戻って来たものだ。二人のうちの一人は砂漠に連れ込まれ今頃砂の中で骨になっているに違いない。もう一人の奴は誘導しようとした米国の戦闘機を振り切って、イランのはるか上空で自爆したそうだ。自爆はアラブ人のお得意の手って訳か。お前は良いよな。何といっても義理の親父さんがかの有名なシャイ・ロック殿だからな。アメリカ政府と取引してお前だけを助けただなんて、本当にシャイ・ロックはズルい奴だよ。」
エリートはその時すべてを悟った。なぜ自分一人だけが無事帰還できたのかを。帰還報告を義父に報告した時、義父はねぎらいの言葉をかけてくれた。但しその言葉遣いは淡々としており、逆に言葉の裏に何かあることを感じさせるものであった。妻のアナットは涙を流して喜んだが、それすらも夫に対してではなく彼女自身に対するものであるという印象が強かった。事実、アナットは心の中で快哉を叫んでいたのである
『これで夫の出世は間違いない。ひょっとすると将来父親と同じ位階勲章に輝くことも夢ではない』
―――――――――――
エリートと宇宙飛行士モシェは対話の最後にお互いの健闘をたたえ合うかのように軽くハグした。その時モシェの吐息と共に微細な物体がエリートの体内に忍び込んだ。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html
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