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(目次)
第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(15)
182 混迷深まる中東(2/3)
その結果イラン・イラク戦争はアラブ人対ペルシャ人(イラン)という因縁の民族的対立に加えシーア派対スンニ派という宗派対立の構図が炙り出され、君主制の湾岸諸国が世俗国家イラクを後押しする羽目になった。これに対してイランはシリアを側面支援してレバノンを舞台にシリアとイスラエルの代理戦争を演出、さらにイラク及び湾岸諸国のシーア派住民を使嗾して各国の体制に揺さぶりをかけたのであった。加えてホメイニ憎しの米国は民主主義の理念を棚上げして独裁国家イラクを支援した。
こうして中東地域ではイランとイラクが直接敵対する関係になり、湾岸諸国にとって味方(イラク)の敵(イラン)は敵という訳であり、中東イスラームという一つの地域の中に敵と味方が混在する構図となったのである。かつてのイスラーム諸国対イスラエルという単純な二項対立が宗派を介して複雑化した。逆の立場のイランにとっても同じことがいえる。即ち味方(シリア)の敵(イスラエル)は敵であり、敵(イラク)の味方(サウジアラビアなどの湾岸諸国)は敵である。そして奇妙なことにサウジアラビアにとってイラン、シリアの敵であるイスラエルはこれまで通りやはり敵なのである。
(続く)
荒葉 一也
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