(英語版)
(アラビア語版)
2023年4月
Part III:キメラ(Chimera)
80. スタンピードの兆候(2)
イスラエル軍の医療特殊部隊もほぼ同時にアナットと同じ結論に達した。一つだけ違うのはアナットが原因を図りかねているのに対して、軍は原因が自分たちが行った防疫対策と言う名目のキマイラの感染拡大によるものであると言うことを認識していたことである。彼らはそれを極秘扱いにした。
ところが時が経つに従い兵士の間で奇妙な噂が流れ始めた。
<パレスチナの女は子供が産めなくなったそうだ>
実際、パレスチナ女性の出生率が急激に下がり、それは年を追うごとに深刻さを増していった。
そして兵士たちに悪魔のささやきが聞こえたのである。
<女が妊娠しないのなら何をやっても大丈夫だ>
皆兵制のイスラエルではミズラフィムなどのユダヤ人を含むイスラエル国籍者は男女を問わず若くして徴兵される。例外はパレスチナ人だけである。パレスチナ人を軍隊に入隊させて殺傷兵器を持たせればテロ行為に走る恐れがあるから皆兵制から除外しているのである。
しかし軍隊での禁欲生活は若い男の兵士にとっては厳しい。女性兵士はいるが兵舎内での恋愛はご法度である。中には男女の関係になり結婚まで進むものもいるが、男性の血筋や外見、除隊後の出世の見込みなど、女性兵士も打算的である。大多数の男性兵士は日常的に欲求不満状態である。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html
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