石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:石油篇1 埋蔵量(1)

2014-06-18 | その他

(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2014」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

(シェールオイル・ブームで埋蔵量世界ベストテンに入った米国!)
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数
(1) 2013年末の埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G01.pdf参照)
 2013年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆6,880億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると、中東が全世界の埋蔵量の48%を占めている。これに次ぐのが中南米の19%であり、以下北米14%、欧州・ユーラシア9%、アフリカ8%であり、最も少ないのがアジア・大洋州の2%である。現在、世界の石油の約半分は中東地域に存在しているのである。

 次に国別に見ると、世界で最も埋蔵量が多いのはベネズエラの2,980億バレルで世界全体の18%を占めており、第二位はサウジアラビア (2,660億バレル、16%)である。ベネズエラは2005年のBP統計では世界6位の772億バレルに留まっていたが、2009年統計では1,723億バレルに急増し、2011年以降は現在のような数値に置き換わっている。このような埋蔵量の急激な増加はチャベス前大統領の在任時の政府発表によるものであり国家の威信を示すための政治的要素が強いが、BPは同国にオリノコベルトと呼ばれる非在来型の重質油が2,200億バレルあると脚注している。オリノコベルト原油はこれまで商業生産の方法が確立できず、石油業界では重視されていなかった。しかし同じ非在来型のシェールオイルやオイルサンドが米国、カナダで急速に市場での存在感を高めている。従ってチャベス後のベネズエラの石油産業で若し欧米の先端石油開発生産技術が応用されるようになればオリノコベルト原油が市場に登場するのも遠い将来ではないと思われる。

(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-T01.pdf参照)
 BP統計上では埋蔵量が1千億バレルを超える国はベネズエラ、サウジアラビアのほかカナダ(1,740億バレル、10%)、イラン(1,570億バレル、9%)、イラク(1,500億バレル、9%)及びクウェイト(1,020億バレル、6%)の6カ国である。これら6カ国のうちサウジアラビア、イラン、イラク及びクウェイトの4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の国である。

 以下7位から10位まではUAE(980億バレル)、ロシア(930億バレル)、リビア(480億バレル)及び米国(440億バレル)である。米国は昨年、埋蔵量を大幅に見直し世界11位となったが、今年はついにベストテン入りを果たしている。シェールオイルの相次ぐ発見と開発の結果である。

 なお世界上位10カ国のシェアの合計は85%に達し、石油が一部の国に偏在していることがわかる。因みにOPEC12カ国の合計埋蔵量は1兆2,140億バレル、世界全体の72%を占めている。「生産量」の項で触れるが、OPECの生産量シェアは42%であり埋蔵量のシェアよりかなり低い。これは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。

 (続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月18日)

2014-06-18 | 今日のニュース

・韓国の4月イラン原油輸入は半減

 

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(ニュース解説)OPECの現状に嫌気が差したサウジ石油相?-第165回総会をめぐって

2014-06-17 | OPECの動向

 6月11日、オーストリアのウィーンで第165回OPEC総会が開かれた。会議では現行生産枠3千万B/Dを引き続き維持することを決定、また次回総会を11月27日にウィーンで開催すること、リビア出身のバドリ現事務局長の任期を来年1月からさらに半年延長することも決まった 。OPEC最大の生産国サウジアラビアのナイミ石油相は総会前の記者談話で需給バランスは均衡しており100ドル超の北海ブレントの原油価格も満足すべき水準であると語っている 。これに対して強硬派と目されるイランやベネズエラからは特段のコメントは無かったこともあり、表面的に見る限り至極平穏な総会だった訳である。

 しかし内実を見ると最近のOPECは年2回の総会が惰性に流れており、また世界の石油市場における支配力を失いつつある。そのような状況に対してサウジアラビアはいらだちを覚えているように見受けられる。それが証拠に今回の総会でのナイミ石油相の言動がこれまでとは異なっていたことを外電は報じている。一つはナイミ石油相が総会当日遅れて出席したことであり、もう一つは彼が席上で総会は年1回で十分ではないか、と提言したことである 。これまで総会を皆勤し、定刻を厳守していたナイミ石油相の遅刻は意図的と見て間違いあるまい。そして3千万B/Dの生産枠は2011年12月の第160回総会で決定されたものであるが、その後今回を含めて5回の総会では何ら7突っ込んだ討議もなく生産枠3千万B/Dが据え置かれたままと言う事実に対してナイミ石油相は総会開催減を提言したのである。

 2011年以来石油価格は100ドル台を維持しているが、OPEC加盟国はいずれもその価格水準に満足しており生産枠を変更する必要は無い、と言えそうだが、実は現在のOPECは3千万B/Dの生産を維持することが精一杯の状況なのである。OPEC加盟国特に中東北アフリカの加盟国ではリビアが「アラブの春」を乗り越え、イランは政権交代による欧米禁輸緩和が期待され、イラクは石油生産が回復するなど増産のプラス要因と目される状況が続いた。このためOPEC加盟国が増産競争に走るのではないか、と言う憶測すら生まれ始めていた。

 しかし最近の動きを見る限りイランは経済制裁解除が遅々として進まず、イラクはアルカイダ系過激派組織の武装闘争とこれに乗じた北部クルド勢力がキルクーク油田を支配下に収めイラク全体の安定生産が危惧される事態である。またリビアでは部族勢力と中央政府の対立により石油生産量が激減している。これらの国々では石油増産どころではなさそうだ。MENA以外のOPEC主要生産国であるナイジェリア、ベネズエラも現状維持が精一杯で増産どころではない。前者は部族闘争に加えイスラム過激派「ボコ・ハラム」の暗躍でニジェール・デルタの油田地帯の治安が悪化している。ベネズエラでは米国のシェール石油増産により自国の輸出がままならない状況である。

 このように見ると石油の増産・輸出余力があるのはサウジアラビアだけである。実際同国はIEAの増産要請にその都度応じた結果、現在の生産量は1千万B/D前後に達しているが、それでもなお2百万B/D程度の増産余力を有している。同国の増産によりOPECは何とか世界シェア3割台を維持しているのであり、OPECの威光を守っているのはサウジアラビアただ一国である。世界経済が徐々に回復傾向を見せており、世界的な石油の増産圧力が高まった場合、その標的となるのはサウジアラビアである。ナイミ石油相は消費国から圧力を受け、他のOPEC加盟国からは一方的に頼られ、常に矢面に立たされる自国の立場に割り切れない思いを感じているに違いない。それが総会の開催を年2回から年1回に変えたいと言う提案の真意であろう。勿論サウジ以外の加盟国はこの提案に難色を示し結局次回は11月に開かれることになったことは冒頭に触れたとおりである。

 もう一つ表面には出ていないが、ナイミ石油相がOPEC総会に嫌気がさしているのはバドリ事務局長の後任問題であろう。バドリ事務局長は2012年12月に交代の予定であったが、後任事務局長にサウジアラビア、イラン及びイラクの3カ国がそれぞれ候補者を立てて三つ巴となった。そのため任期が既に2回延長されている。今回は半年の延長である。今後どうなるかは予断を許さないが、ナイミ石油相としては名実ともにOPECの主導権を握るため事務局長ポストをイラン、イラクに譲る訳にはいかないのである。

(完)

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   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月15日)

2014-06-15 | 今日のニュース

・イラク情勢不穏で原油価格急騰。Brent$113.09, WTI$106.65.

・ナイミ・サウジ石油相、OPEC総会で開催頻度年2回を1回に提案。他国は賛同せず

 

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今週の各社プレスリリースから(6/8-6/14)

2014-06-14 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/11 OPEC    OPEC 165th Meeting concludes http://www.opec.org/opec_web/en/press_room/2845.htm
6/11 国際石油開発帝石    幹部社員の人事異動について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140611-b.pdf
6/11 国際石油開発帝石    ノルウェー王国現地法人会社の設立とオスロ事務所の開設について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140611-a.pdf
6/11 石油連盟    石油連盟会長コメント 第165回OPEC定例総会終了にあたって http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2014/06/11-000693.html
6/13 国際石油開発帝石    オーストラリア 西豪州沖合 WA-504-P鉱区権益(探鉱鉱区)の落札について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2014/20140613.pdf

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月12日)

2014-06-12 | 今日のニュース

・OPEC第165回総会、現行生産枠3千万B/D維持を決定

・開発コスト急騰と価格下落で苦闘する天然ガス開発業界

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サウジアラビア・サウド家(改訂版)(10)

2014-06-09 | OPECの動向

2.第三次サウド王朝(続き)
(3)ファイサル時代に固まった現代の諸制度(その4:教育・文化)
 教育と文化の面でもファイサル国王時代に新たに導入されたものが少なくない。教育については1970年、リヤドにサウジアラビア初の女子大学Princess Nora Universityが開学している。因みにPrincess Noraとは初代アブドルアジズ国王の1歳上の姉、つまりファイサルの伯母の名前である。ファイサルは社会開発に熱心であり1970年に「第一次5カ年計画」を策定しているが、同じ年に女子大学も設立した訳である。

ワッハーブ(サラフィー)主義を含むイスラム原理主義者達は一般に女性の教育や社会進出に熱心でなく、時にはこれを否定する行動をとる。タリバーン政権時代のアフガニスタンで女子学校が閉鎖されたことは良く知られており、またパキスタンでわずか12歳の少女マララ・ユスフザイが下校時にタリバーンに襲われ重傷を負ったが奇跡的に回復した話は有名である。そして最近ではナイジェリアにおける「ボコ・ハラム」による女子中学生誘拐事件も発生している。「ボコ・ハラム」とは「ボコ(西洋式の非イスラム教育)」は「ハラム(罪)」であると言う意味であり、キリスト教のミッションスクールを否定することなのである。

 このように現代でも一部のイスラム諸国で女性の教育の権利が奪われている中で、サウジアラビアでは40年以上も前に女子大学が開設され、今や学生数世界一の女子大学となったのはファイサル国王の業績の一つと言えよう。

 しかしながら女性教育の拡充が女性の社会進出に直結していない点が現在のサウジアラビアの最大の問題であることも事実である。同国では女性の就職難が大きな課題であり、最近の調査では女性の失業者数は120万人に達すると言われる 。サウジアラビアの女性は「大学は出たけれど--」と言う深刻な問題に直面しているのである。

 世界経済フォーラムが発表している世界各国の男女の格差をランク付けした「世界男女格差指数(The Global Gender Gap Index)」の2013年版によればサウジアラビアは世界136カ国中の127位であり、世界の最下位グループにランクされている。サウジアラビアは女性を含む若者の教育に多額の予算をつぎ込んできたが、教育施設などハード面では充実しても、教育カリキュラム或いは大学卒業後の社会進出などのソフト面はファイサル時代に比べ余り進展したとは言えない。

 ファイサル国王時代の文化面の改革としてはテレビ放送の導入をあげることができる。当時テレビは偶像崇拝を禁止するサラフィー(ワッハーブ)主義の教えに反するものとして宗教界が強く反対していた。しかしファイサルはテレビの普及は世界の潮流であり、政府の政策を国民に浸透させる手段としてテレビが有効であるとして反対を押し切って国営テレビを開局した。この時狂信的な王族が抗議デモを行い、ファイサル国王の甥ハリド王子(ムサイド王子の長男)は内務省の治安部隊に射殺されている(1966年「テレビ塔事件」)。

 この事件の9年後、ファイサル国王はハリド王子の弟ファイサルに暗殺されるのであり、ファイサル国王はテレビと言う近代メディアの導入により自らも犠牲者になったと言えよう。但しテレビの導入も上記の女子高等教育と同様、その後のサウジアラビアの近代化につながった訳ではなく、報道の自由は今も同国の大きな課題の一つである。それが証拠に世界のジャーナリストが評価する「報道の自由度(Press Freedom Index)」(調査機関:国境なきレポーター, Reporters Sans Frontieres, 本部:パリ)の2014年度版によればサウジアラビアの報道の自由度は世界181カ国中の164位であり、世界最下位クラスなのである。

 上記の女子教育或いはメディア文化の例で言えることは、共にファイサル国王の時代に導入されたものの、その後の社会の進歩或いは革新に寄与することなく現在に至っていると言うことである。つまりファイサル国王は進歩的、革新的な一面があるものの、それはあくまでイスラムの戒律を守りサウド家の支配体制を守ると言う保守主義の域を出ていない。現在のサウジアラビアの原型がファイサル時代にあると言うのはそのような意味においてなのである。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月7日)

2014-06-07 | 今日のニュース

・リビア、石油減産による歳入減300億ドルに達する。外貨準備は十分と中央銀行

 

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今週の各社プレスリリースから(6/1-6/7)

2014-06-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/3 出光興産    機 構 変 更 の 件 http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2014/140603_3.pdf
6/3 出光興産    役員異動に関するお知らせ http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2014/140603.pdf
6/5 JXホールディングス    当社子会社と韓国SKグループによるパラキシレン製造工場の商業運転開始について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20140605_02_02_1050061.pdf
6/5 昭和シェル石油    第10回 昭和シェル石油 環境フォト・コンテスト実施のお知らせ http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2014/060502.html

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月5日)

2014-06-05 | 今日のニュース

・IEA:2035年までにエネルギーの供給に40兆ドル、効率化に8兆ドルの投資が必要

*IEA World Energy Investment Outlook参照

http://www.iea.org/publications/freepublications/publication/name,86205,en.html

 

 

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