石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

データベース更新のお知らせ

2022-01-20 | データベース追加・更新

年月下記データベースを更新しましたのでご自由に利用ください。

 

OPEC加盟国/米国/ロシアの原油生産量(2019年1月~2021年12月)

内容:OPEC全体/サウジアラビア/イラン/ベネズエラ/リビア/イラク/ナイジェリア/UAE/米国/ロシア/米露サウジ3カ国/同 with Brent原油価格

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石油と中東のニュース(1月19日)

2022-01-19 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

 

・Brent, WTI両原油、7年ぶりの高値。Brent $87.50, WTI $85.18

(中東関連ニュース)

・UAEアブダビの油槽所と空港にドローン攻撃、3名死亡。イエメンフーシ派が犯行声明

・UAE、イエメンフーシ派のドローン攻撃で国連安保理事会会開催を要請

・イエメン;サウジ主導連合軍、首都のフーシ派拠点を報復空爆

・文韓国大統領、サウジ皇太子と会談。グリーン水素共同開発等でMoU締結

・レバノン法廷、中央銀行総裁の資産を凍結。30年近い任期中に不正蓄財

・エジプト、最低賃金を$172/月に12.5%引き上げ。7月から実施予定

・イスラエル、ワクチン効果不明のまま4回目の接種続行

・イランの教育、健康関連NGO組織に日本が支援のMoU締結

 

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石油と中東のニュース(1月17日)

2022-01-17 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・韓国大統領、UAE訪問。国防、水素協力などでMoU締結

・イラン核協議、各国代表が一時帰国。暗礁に乗り上げた交渉

・レバノン:シーア派ヒズボッラー、閣議ボイコット中止。経済回復優先

・スエズ運河拡張工事、2023年7月完成予定

・レバノン:燃料不足で自家発電動かずインターネット不通に

・昨年のドバイ不動産取引411億ドル、2009年以来の高水準

・イラン:人気作家Pezeshkzad死去

 

 

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SF小説:「新・ナクバの東」

2022-01-17 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

Chapter 1. 未明の出撃

 20XX年某月某日未明、イスラエルの空軍基地から3機のF35ステルス戦闘機が東に向けて飛び立った。通常の訓練飛行或いは作戦訓練であれば西の地中海上空に向かうはずである。東へ向かえば数十分で隣国ヨルダンの国境を越え、さらにはサウジアラビア或いはイラク上空に達する。それは明らかな領空侵犯である。

 

しかし3機は離陸後ぐんぐん上昇し、高度1万メートルに達すると水平飛行に移り迷うことなく進路を真東にとった。高々度で巡航し目標地点が近くなれば低高度で侵入、任務終了後再び高々度に上昇して基地に帰還する予定である。作戦用語でいわゆる「Hi-Lo-Lo-Hi(ハイ・ロー・ロー・ハイ)攻撃」と呼ばれるものである。機内の全地球測位システム(GPS)と機体に装着したレーザー誘導爆弾(LGB)「バンカーバスター」にセットされた攻撃目標はイランの首都テヘランの南200マイルにあるナタンズ。目標までの距離は約2,000KM。ナタンズの地下十数メートルの壕には数千基の遠心分離機によって濃縮ウランが製造されている。イランの核開発施設の中で最も需要な施設の一つである。

 

 イランの核関連施設にはナタンズの他にウラン遠心分離に必要な六フッ化ウランを生産する施設がイスファハンにあり、またアラクに重水プラント及びプルトニウム生産炉がある。これら三つの施設が総合的に結びつけば、イランは米英仏露中の五大国及びインド、パキスタン、北朝鮮に次ぐ世界9番目の核兵器保有国となることができる。否、イスラエルが核兵器を保有していることは公然の秘密であるから、イランは10番目の核保有国となる。イスラエル自身は核兵器を保有していることを否定も肯定もしない。思わせぶりな態度を取ることがむしろ周辺アラブ・イスラム諸国に対する無形の圧力となっている。

 

その一方、イランの核開発を座視すればイスラエルは自国の優位性を失うことになる。そのイスラエルにイラン核施設を攻撃する絶好の機会が訪れた。米国の共和党大統領がイランと世界の強国が結んだ核開発協定を一方的に離脱し、経済制裁を課した。と同時に大統領はUAEなどアラブの数カ国を抱き込んでイスラエルと外交関係を結ばせた。さらに中東地域からの米軍の撤退を進めた。この結果、中東地域のパワーバランスが崩れたのである。

 

これを契機にイランはウラン濃縮を再開、核兵器の実用化に必要な濃度まで今一歩に達した。欧米諸国はイランが危険なレッドラインを越えたととらえた。イスラエル軍部、そして極右国粋主義者達にとっても受け入れられないことであった。彼らユダヤ人は自分たちが人類史上最も優秀な民族であると固く信じている。米国の白人には一目置くものの、自国の周辺に住むアラブ人、ペルシャ人などは劣等民族としか考えていない。数次にわたる中東戦争でアラブ人を完膚なきまでに叩きのめした。そして今、米国のとりなしでUAE、スーダンなどいくつかのアラブ諸国と和平を結んだことによりアラブ陣営を無害化することに成功した。

 

イスラエルにとってペルシャ人とてもアラブ人と五十歩百歩である。イランごときが自分たちと対等の立場に立つのは我慢ならないのである。降ってわいたのが米国の大統領の交代である。新しい大統領はイラン核交渉への復帰を表明し、またイスラエル国内の入植地拡大に異議を唱えた。ただ復帰交渉は難航している。

 

イスラエルは米新政権の厳しい姿勢に焦ると同時に、イランの核兵器が開発途上である今こそがイランを叩く絶好のチャンスと考えた。イスラエル軍部にイラン攻撃論が急速に高まった。

 

 ナタンズ爆撃に向かうイスラエル空軍パイロットにとってはそのような政治や経済の問題など無関係である。今彼らの心は高ぶっている。何しろイスラエル空軍が他国に出撃するのは久しくなかったことである。最近で言えばイラクの核疑惑施設空爆とレバノン南部のヒズボラーキャンプ攻撃があるが、いずれも近距離の隣国であり、アラビア半島を横切る本格的な長距離爆撃は初めてのことである。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

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石油と中東のニュース(1月15日)

2022-01-15 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・Brent原油$85に近づく。WTIは$82.43

(中東関連ニュース)

・トルコとアルメニアが歴史的和解目指しモスクワで協議開始

・イラン外相、中国訪問。王外相と包括的協力を協議

・イランとシリア、自由経済特区及び合同銀行設立で基本合意

・チュニジア首都で大規模な反政府デモ

・シリア:クルド人勢力が新政党「シリア建設発展党」を結成

・GCC6カ国、サウジで合同軍事演習

・林外務大臣:レバノン支援は続ける。記者会見で表明

・ドバイ万博、入場者1千万人突破

 

 

 

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今週の各社プレスリリースから(1/9-1/15)

2022-01-15 | 今週のエネルギー関連新聞発表

1/11 ExxonMobil

ExxonMobil expands interest in biofuels, acquires stake in Biojet AS

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0111_ExxonMobil-expands-interest-in-biofuels-acquires-stake-in-Biojet-AS

 

1/11 Saudi Aramco

Aramco and China Building Materials Academy announce the launch of NEXCEL – a new center of excellence for non-metallics

https://www.aramco.com/en/news-media/news/2022/new-center-of-excellence-for-nonmetallics-in-china

 

1/12 コスモエネルギーホールディングス

当社の東京証券取引所新市場区分(プライム市場)決定のお知らせ

https://ceh.cosmo-oil.co.jp/press/p_220112/index.html

 

1/12 Saudi Aramco

Aramco expands European downstream presence with PKN Orlen investments

https://www.aramco.com/en/news-media/news/2022/aramco-expands-european-downstream-presence-with-pkn-orlen-investments

 

1/14 ENEOS/丸紅

環境負荷の低い燃料を使用するエチレン輸送船の導入について

https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20220114_03_01_2008355.pdf

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石油と中東のニュース(1月13日)

2022-01-13 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・トルコ外相、中国訪問。王外相と会談、ウィグル問題提起

・オマーン:国王即位2年迎える

・危機勃発のレバノンで強盗、誘拐事件多発。 *

*参考レポート「天国のはずが地獄だったベイルート:カルロス・ゴーンの場合 」(2021年9月)

・ヨルダン、劇的に増加した麻薬密輸

・イラク:内戦終焉でにぎわう考古学発掘現場

・サウジのコロナ患者数過去最高に。累計感染者数59万人、死者8,900人

・エジプト:来年に電気自動車1号機製造。売値2万ドル

・昨年のイスラム債発行総額2,523億ドル:Fitch Rating

 

 

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財政悪化は各国共通、格付け変更先延ばし:世界主要国のソブリン格付け(2022年1月現在) (下)

2022-01-12 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0554SovereignRatingJan2022.pdf

 

3.2019年1月以降の格付け推移

  ここでは2019年1月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

 

(固定化する欧米とアジア・新興経済国との格差!)

(1)世界主要国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

先進国の中ではドイツが過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国は米国よりさらに1ランク低いAAを過去3年間続けている。

 

これに対しアジアの経済大国中国と日本の格付けは3年間A+で推移している。AAAのドイツとは4ランク、米とは3ランク、英国とは2ランクの格差があり、過去3年間格差は解消していない。これら欧米・アジアの経済大国より格付けは少し下がるが、石油大国のサウジアラビアは2019年1月以降格付けA-を維持している。

 

コロナ禍前の世界的な経済成長の中で注目されたBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字)諸国は、上述のとおり中国が日本と同じ格付けである。その他の4カ国を見ると、ロシアとインドは2019年1月以降格付けBBB-である。これは投資適格の中で最も低く、S&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。」とされている。

 

2019年1月には南アフリカはBB、ブラジルはBB-の、いずれも投資不適格であった。2020年7月には南アフリカもBB-に格下げされ、以来今回まで同じ格付けである。BBの格付け定義は、「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされ、信用度が低い。

 

(GCCのトップグループから脱落続けるクウェイト!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2019年1月時点ではUAE(アブダビ)及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。しかしクウェイトは2020年上半期にAAからAA-に格下げされ、2021年下半期にはさらにA+に落ちている。これに対してアブダビ及びカタールは同じ格付けを維持している。

 

3カ国は政治体制、人口・経済規模などが似通った産油(ガス)国である。それにもかかわらずクウェイトの格下げが止まらないのは、同国が中途半端な議会制民主主義を採用している結果、政情が安定せず経済改革がほとんど進まないことに原因があると考えられる。

 

サウジアラビアはこれら3カ国より低くA-を続けている。同国はUAE(アブダビ)、クウェイト、カタールを大きくしのぐ石油歳入を誇っているが、一方で人口も3カ国より飛びぬけて多いため、財政的なゆとりが乏しい。S&Pはこれらの事情を考慮してサウジアラビアの格付けを厳しく見ている。

 

オマーンとバハレーンは投資不適格の格付けであり、有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がごくわずかなバハレーンのソブリン格付けは過去3年間B+にとどまったままである。オマーンは2019年1月から2020年上半期までBB格付けを続けたが、その後一年の間に2ランク格下げされ、現在ではバハレーンと同じB+なっている。格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い。」とされており、オマーンとバハレーンの経済には不安感がある。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(1月11日)

2022-01-11 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・バスラ(イラク)-アカバ湾(ヨルダン)原油パイプライン建設に青信号

(中東関連ニュース)

・サウジ外相、中国訪問。王外相と会談

・韓国大統領、17日からUAE、サウジ、エジプト3カ国訪問

・ウィーン核協議は進展:イラン外務省

・イスラエル首相:イラン核協議に拘束されず必要なら独自の行動とる

・イラク国会始まる。議長にスンニ派Al-Halbousiを選出

・イラン外相、オマーンを日帰り訪問。イエメン問題など協議

・イラン/アフガニスタン両国外相、テヘランで協議

・アフガニスタン:タリバン政権、週末に反タリバン勢力とテヘランで会合

 

 

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財政悪化は各国共通、格付け変更先延ばし:世界主要国のソブリン格付け(2022年1月現在) (上)

2022-01-11 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0554SovereignRatingJan2022.pdf

 

 本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の2022年1月現在の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。

 

 因みにS&Pの格付けは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている[3]。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.と表示される。

 

*過去のレポートは下記ホームページ参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html 

 

(ほとんどの国が格付け変更なし!)

1.2022年1月現在の各国の格付け状況

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

2022年1月現在の格付けを半年前の2021年7月と比べると最高格付けAAA(トリプルA)のドイツ、シンガポール等の国々を含めAA+の米国、AAの英仏、A+格付けの日本、中国など主要な国々に変動はなかった。

 

日本を含む極東各国(地)の現在の格付けは香港のAA+が最も高く、韓国と台湾が1ランク下のAA、日本と中国がさらに2ランク低いA+とされている。香港の格付けは米国と同じであり、中国本土より3ランク高い。米中の対立および中国の同化政策が厳しさを増しており、格付け機関が今後香港に対してどのような評価を下すのか注目される。

 

G7の国々のうちドイツ及びカナダはAAAの最高格付けであり、米国は1ランク下のAA+、英国及びフランスはさらに1ランク低いAAである。そして日本はAAAより4ランク低いA+に格付けされ、イタリアは投資適格ではあるがBBBにとどまっている。因みに格付け定義ではAAは「債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付け(トリプルA)との差は小さい」とされ、これに対して格付けAは「債務を履行する能力は高いが上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化からやや影響を受けやすい」とされている。そしてBBBの定義は「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」である。

 

G7以外の国ではアジア諸国のうちシンガポール及びオーストラリアがAAAに格付けされ、またMENA諸国では、アブダビがAAに、カタール及びイスラエルAA-に格付けされている。サウジアラビアの格付けはA-である。

 

 アジアの国々の多くは投資適格では最も低いBBBの格付けであり、タイ及びフィリピンがBBB+、インドネシアはBBB、インドはBBB-である。またロシアはインドと同じ格付けで、南米のブラジルとアルゼンチンはいずれも投資不適格である。ブラジルはBB-、アルゼンチンの格付けはCCC+とされている。

 

 昨年下半期ではクウェイトがAA-からA+に格下げされたが、それ以外の国々は変更されていない。因みに昨年上半期には台湾、アイルランド、アルゼンチンなどが格下げされている。

 

世界的に新型コロナウィルスが猛威をふるい、各国は感染対策、景気下支えのため巨額の財政出動を行っており、財務内容が悪化している。この状況が格付けに反映されていないのは事態が全世界の国々で同時進行しているため格差がつけられず格付け変更が先延ばしになっていると見て良いであろう。コロナ禍が終息し景気の足並みに乱れが出るようになれば格差が顕在化するものと思われる。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

 

 

[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。

[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

[3] S&Pの格付け定義についてはhttp://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf参照。

 

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