たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

(4)鹿島槍ヶ岳~蓮華岳縦走

2021年07月07日 | 心に残る思い出の山

続き(新越山荘から針の木岳)

今日は行程中、一番ハードな日。体力勝負になりそうなので焦らずユックリを心がけ6時15分、小屋を出る。

 

岩場を通った事は覚えているが鳴沢岳への標高180mがどんな登山道で有ったか今、全く思い出す事が出来ない。未だ体が目覚めていない朝一の登りがかなり大変で外に目と心を写す余裕が無かったのか・・・ただ強風に帽子が飛ばされないようスカーフを出して頬被りした事は覚えている。

6時55分 鳴沢岳制覇

鳴沢岳を下り吊り尾根状の岩稜を通って次は赤沢岳だ。立山連峰の中腹にトンネルが見えた。私達が今、踏みしめている尾根の真下はトンネルで黒部ダム迄のアルペンルートが走り黒部ダムからケーブルに変わって今見えているトンネルを潜って室堂へ行くのである。近眼の雄さんはそのトンネルをとうとう見つけられない。

風当たりが一段と強くなった。風が荒れ狂う赤沢岳に7時50分着。

風は強いが真下に黒部湖を見る展望峰、素通りするには勿体ない場所だ。ふらつく足で周囲に目を向けると、あんな遠くにと思っていたスバリと針の木はもう目の前。だがその姿は雪渓を抱えた山の宿命か、決まった時間になると必ずガスが動き出し消されたり現れたりの繰り返し。

右奥のドッシリとした山塊は薬師岳だそうだ。そう思って見れば成るほど南稜、中央、金作谷の三つのカールがスプーンで抉った様な形で良く見える。その右の五色が原も素晴らしい。双眼鏡を当てると小屋とそれを囲む草原がのどかな景観を呈しているではないか。

もう一度、黒部湖に目を移すとダムの上を歩く人達や遊覧船の行き来する光景が手に取る様に見える。トルコ石を白く縁取った様な美しい湖だ。

30分程休んでいよいよスバリ岳に向かった。

(両側が切れ落ちた稜線。どちらに落ちても怪我で済みそうもない)

赤沢岳の下りは何しろ大変だった。急峻な上に岩層の道はざれて全てが浮石なのだ。谷から吹き上げてくるガスは渦を巻きながら容赦なく稜線を乗越ていく。まるで噴霧器を使って霧を押し出している勢いだった。

そのガレを184m下り長野県側も富山県側も恐ろしく切れ落ちている蟻の戸渡りの様な場所をクリアすると高度差258mの登り返しが待っていた。(このアップダウンは柏原新道から眺めた時に既に覚悟は出来ていたはずだったが実際、歩いてみると痩せ尾根と岩屑の急峻な山道は想像以上のものだった)

砂地から再び岩稜の急登となると周囲は白一色、今まで友となり叱咤激励してくれた剣もガスの中に消えた。相変わらずザラザラした斜面は次第にかなりのピッチで登るようになり呼吸の乱れが段々酷くなっていく。こうなると一歩一歩足を出す事が精一杯で言葉を交わす元気などない。

「コマクサだよ」と言う雄さんの声を耳にしても一つ二つの株には感動も湧かなくなっていた。暫く行くと三人の男性が休んでいて「コマクサが凄いですよ」と教えてくれた。見上げると斜面一帯がコマクサ。今までこれ程のコマクサに出会えた事が有ったろうか。ザックを置くと疲れも忘れてざらついた斜面を滑りながら写真を撮りまくっていた。

私達とは逆方向を辿る単独の女性が来たので「奥さん、上・上」と声を掛けると「登山道はこちらでいいのよ」と無言の抗議の目を向けられた。私もひつこく言うとやっと気付き「知らないまま通り過ぎる所でした。教えて下さって有難うございました」と言いながら暫く花に見入っていた。

さて!と思い腰を上げズッと似た様な岩屑の繰り返しをしながら上を目指す。ガスが巻いて周辺は再び何も見えなくなった。前方にボーッと岩陰が浮かび上がれば頂上と期待する。しかし登りあげると未だ先がある。それを繰り返し標高差258mを登りあげ10時30分、スバリの山頂に着いた。

 

今日、雪渓を登って来たという男性から雪渓の情報を頂きながら30分程休憩。後は此処から一旦ヤマクボのコルに下って標高差150mを我慢すれば待望の針の木岳である。

 

時折ガスの切れ間に見える黒部湖や多彩に咲き乱れる花々を目で1時45分、ついに長年の夢だった針の木山頂に到着した。風は相変わらず厳しい。ここは北アルプスのほぼ中心に位置する場所なので展望は素晴らしいらしいが、この日は赤牛岳までが限度で槍山群は雲の中。私達は岩陰で風を避け剣と対峙してお弁当を広げ時間の許す限り過ごす事にした。

花の写真を撮りに来たカメラマンに解らなかった花の名前を教わったり。すっかり馴染になった立山・剣を眺めたり・・・時間の経つのは恐ろしく早かった。そろそろ下ろうかと話し合っていた時、ここに来て初めて高瀬湖が幻の様に浮かび上がった。そのまま雪渓を突き上げて行けば、そのちょうど真上に槍の穂先が見える筈なのだが・・・

針の木の下りは圧倒される程の花・花・花。「小屋の屋根が見えた!! ん?何かいい匂い」と言いながら下って行くとテント場に一張りのテント。その前で若者が小さなフライパンでウインナーを炒め蕩けるチーズを入れて調理の真っ最中だった。「いい匂いが上にまで届いていましたよ」と声を掛けると爽やかな笑顔が返った。

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