続き(針の木小屋)
針の木小屋→平成7年新築 トイレが外に有るのが難
新越山荘で同宿した千葉の人に針の木は外にトイレが三棟並んでいるが三つの内の槍見荘と掲げられたトイレは窓から槍が眺められる中でも一番綺麗なトイレだから行きたくなったら槍見荘が良いと聞かされていた。
そんな事からかいつも混んでいて順番待ちになるので汚いのを覚悟で別のトレを利用したが中に入り便器(?)から下を覗くと崖になっていて万が一落ちたら汚物と共に谷底へ転がり落ちてしまう、そんなトイレだった。山に来て文句は言えないが、これが許可されている事が不思議に思えた。
小屋に着くとさすが外に出て歩き回る元気はない。ここは廊下を挟んで両側に布団が並べてある言わば一般的な小屋の間取りだ。同じ側の3人はスベリ岳でコマクサの群落を教えてくれた人たち。新越山荘では同室者のいびきに悩まされ足で蹴ってやったが効果なく枕を投げつけてやったとボヤイテいた。
その内の一人が部屋の人達と交流が始まると「私は天下の高島屋・横浜店ピエールカルダン売り場、高島屋の丹沢と言えばすぐにわかる」と大きな声。それを繰り返し繰り返し同じ言葉を何度聞かされたことか。デパートの売れ行きが伸び悩んでいる昨今、社員によるPR作戦なのか・・・雄さんに聞いたら高島屋の中で一番売上率が高い横浜店は皆あんな人ばかりだと言っていた。
落ち着いた所で喫茶室へ行き今日まで見た花を図鑑で調べていたら60種を超えていた。気が付くと隣にいた男性が「槍が見えますよ」と私にアピールしている。一人で見ているのが勿体なくて二度三度と声を掛けていたらしいが花図鑑に夢中だったので私は全く気付かなかったのだ。双眼鏡まで貸してくれたので「登山者まで見えたわ」とお礼はジョークで返す。離れていた所に居た雄さん「危なくて一人で山に来させられない」だって。
明けて28日、不思議に体力は回復していた。窓から外を見ると風が強く山々にへばりついた雲は全く上昇の気配がない。雄さんの話では一緒に居ると煩くて直ぐに喧嘩になってしまうのでお互い別の山を登って楽しんでいると言う女性が居たと言っていたが世の中には高島屋の社員も含め色んな人が居り色んな形が有るものである。 そう思いながら今回の山旅を締めくくる蓮華岳へ出発。
登り初めが急登なので、ほんの僅かで針の木小屋が下方に沈み剣が競りあがって来た。
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疎らに咲くコマクサやチングルマ(1)、ツマトリソウ、タカネヤハズハハコ(2)etcを愛でながらハイマツ帯を抜けると登りは一服するが砂礫地帯は横殴りの風が恐ろしいほど凄まじい。細目を開けて前方を見やればザレの緩斜面に細い山道が一筋、その先に蓮華の山頂が見えた。
振り返れば私達が4日間かけて歩いてきた鹿島槍、爺ヶ岳、針の木の山塊がクッキリと、正面の稜線には可愛く種池山荘まで望まれる。右の穂高、槍は厚雲を纏って全容を見せてくれなかった。コメント欄、引き続き休憩中