新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

熊本大地震に思う

2016-04-17 08:24:58 | コラム
気懸かりなことが多過ぎる:

先ずは9万人にも達すると報じられた避難しておられる方の心中は察するに余りあると思う。家屋敷を失い家財を潰されて着の身着のままで避難された辛さと苦しさは私には想像も出来ない。気象庁がいち早く熊本大地震と命名してしまったが、それが本震ではなかった為に地震の範囲が大分県にまで及ぶに至っては、あれは九州中部大地震の様相を呈してきた。

未だ震度4級の余震が続く以上、仮設住宅の設置などは時期尚早にもせよ、地方自治体か政府の役目なのか私には解らないが、衣も食も住も失われた方々の為には先ずは「住」の問題を解決してあげねばなるまい。そこに思いを致せば、それにどれほどの予算措置が出来るのかが門外にいる者としては気懸かりである。仮設だけではなく、再建される方もおられるだろうし、それが自己資金になるのかマイナス金利時代に担保能力も十分ではない方々に銀行が如何なる条件で融資するのかも気懸かりだ。

その前に復興・復旧は焦眉の急だろうが、鉄道も道路も寸断され、阿蘇熊本空港の建屋が破壊されてしまった状態で色々な面で建築関係は言うに及ばず、「衣」や「食」に必要な物資をどのようにして被災地に搬入するのかも気懸かりになってしまう。95年の神戸の大地震の後の復興・復旧の速度は目覚ましいものがあり、98年だったかに神戸を訪れて感心させられたし、65年まで2年ほど住んでいた芦屋の文化住宅は跡形もなかったが綺麗に整地されていたのも印象的だった。「素早さ」が肝腎である。

次に大変だろうとつい考えてしまうのが保険である。一寸話が変わるが、私は在職中に本部の技術サーヴィス・マネージャーと宮城、千葉、埼玉、茨城、神奈川、都下、静岡、愛知、大阪、兵庫、福岡、長崎等々の直接・間接のW社の製品のユーザーである工場その他を年に何度も巡回していた。その際にアメリカ人であるマネージャーだけではなく私も感心していたことは、地方に行けば綺麗な屋根瓦の大きな家と美しく手入れされた樹木に囲まれた家が多いことだった。この傾向は西日本に行くほど顕著になり、その大きさにはマネージャーをして「日本の家が小さいというのは何故か」と不思議がらせていたものだった。

ところが、今回の地震を災害の有様をテレビのニュースで見る限り、熊本県にはその見事な日本の伝統的な建築の瓦屋根の家の屋根瓦が落ちていた光景が多かった。また、熊本城の天守閣でもほとんどの瓦が脱落していた状態だった。我が国では3.11の後か何時かは知らないが「耐震構造の建築」が法制化されたようで、都会では多くの高層建築が建て直されてきていた。だが、熊本城はいざ知らず、伝統的な日本家屋が耐震構造に手直しされていたとは思えない。そこにあの地震が襲ったのでは耐えきれなかったのだろう。再建策が気懸かりだ。

そこで保険である。素人の私には詳しいことを語れないが、損害保険をかける場合にはなかなかそこまで思いを致して補償の資金に限度があると聞く地震保険を、熊本の方々がかけておられたとは想像出来ないのだ。その辺りも気懸かりだが、その問題以外に意外な面もあるのだ。それは3.11の際には「全壊」や「半壊」の査定を保険会社が全ての被保険者の住宅なり何なりを回って査定していかねばならなかったのだそうだ。ところが、あれほどの広範囲の地域を損保会社の社員だけでは効果的に回るのは不可能で、元はと言えば損保の社員だった代理店の人たちも加勢したと、代理店の経営者から聞かされている。

その査定だが、関西地方の大水害の際に公的な補償だったと思うが、「全壊」以外は対象にならず、「半壊」の方は言わば泣き寝入りになるのは不条理ではないかと、国会で野党議員が突っ込んだことがあった。その委員会の委員長は誰あろうかの西川公也現TPP委員長だった。彼は全く取り合わず「法律で決まっているのだから仕方がない」と突っぱねたのだった。私はこの一件を以て西川公也は駄物だと評価していた。本論に戻れば、損保の査定も気懸かりだが、地震保険に入っていなかった場合には苦労される方が出るだろうと密かに憂いている。

私は安倍内閣である以上、予算措置等全てに万事遺漏なきを期するだろうと期待しているが、要点は可及的速やかなる対策を講じることであろう。TPPの審議も重要案件だろうが、それは今日明日に差し迫った問題ではない。震災対策は言うまでもなく焦眉の急だ。連日のように悲惨な状況ばかりを報じているニュースに少しは明るい面が出てくるよう、安倍総理以下に奮起を望む次第だ。即ち、民主党とは違うところを必ず見せて欲しいのだ。