実は15-8の計算の前に、7+8という場面が」あったのだが、指導のときの方程式を記録していなかったので、ここでは紹介できない。その方程式を解く場面だったか、検算の場面だったか、指導を始めた直後あたりに8+7の計算をする場面があった。
この生徒は少し戸惑っていた。繰り上がりの計算でつまずいている典型の生徒であった。「指を使って数えて答えをだしていなか?」と聞くと、その通りだった。正負の数がおぼつかない生徒のほとんどが繰り上がり繰り下がりの計算でつまずいている。
正負の数でつまずいている原因は以前にアップしてある。ここを。
もどって、8+7を教える。
繰り上がりが分かってないから、まず8は10より2少ないということを気づかせる。
T「8は10よりいくつたりない?」
S「2」
T「8にあと2があれば10になるね。その2を7からもらうんだ。」
S「・・・」
T「7から2もらう。その2を8にあげると10になるけど、7のほうはあといくつ残っている?」
S「・・・」
T「つまりね」(板書する)
8+7
8←2もらう 8+2
7→2あげる 2+(のこり)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
8と7ぜんぶでいくつ?
7から2あげたのこりがわかればいい。
S「5」
T「だから8+7はぜんぶで」
S「15」
T「正解!」
8は10より2不足しているから、10に対してー2の働きがある、と教える。
8+7=(10−2)+(2+5)という計算を暗算でやる。足し算なんだけど足したり引いたりしているんだよということを知らせる。
指を使わずに8+7=15をイメージさせる。
暗算の指導を通じて、不足がマイナスで過剰がプラスであることを知らせる。
つまり、正負の数を直接教えるのではなく、正負の数にある「過不足」の考え方を教えながら、繰り上がり繰り下がりの計算の復習をさせるのだ。
正負の数の指導にはトランプで教えたりする実践例があるが、昔からトランプ遊びでも分からない生徒の存在に気づいていた。なぜ分からないのか、当時の私にはその原因が分からなかった。
ヘリウムを入れた風船におもりをつける実験などで補充をしたこともある。30年余り教えた末、たどりついたのは、繰り上がり繰り下がりの計算ができないことが原因だと知ったこと。
繰り上がり繰り下がりの計算ができずに、数えたしをする生徒が正負の数もわかっていないということだった。はじめは知能が低いからで片付けていたが、そうではなかった。「過不足」の概念が希薄だったのだ。退職する2年ほど前にやっと分かった。今となってはもう遅いのだが、研究不足を恥じる。
繰り上がり繰り下がりの計算を通して、過不足の感覚や概念を持たせ、正負の数の計算ができるようにする指導が必要だったのだ。