イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「釣りバリ(歴史・種類・素材・技術)のひみつ」読了

2021年09月07日 | 2021読書
つり人社書籍編集部/ 編 「釣りバリ(歴史・種類・素材・技術)のひみつ」読了

図書館の新規購入書架の空いたところに、表表紙を前にして陳列されていた。さすがは釣り大国の和歌山県の図書館だと思ったがよく考えたら、それでも誰も借りてくれずにそのまま残っていたことになる。そこで僕がまんまとその鉤に引っかかってしまったというわけだ。

この本は、がまかつの全面協力という形で執筆されと書いていた。科学的な分析の部分というのはあまりなく、けっこうがまかつの宣伝というような意味合いもあるように思うがそれでも参考になるところはある。

僕の経験から考えると、対象になる魚を釣るための鉤の種類をたくさん持たなくなってくるとその釣りは一定の成果を上げてくるようになる。
チヌ釣りがその最たるもので、今はがまかつの「細地チヌ」という鉤しか使っていない。逆に、ポケットに入りきらないくらいの種類を持って出かけるのがフカセ釣りだ。このブログを読んでいただいてもわかるけれども、フカセ釣りでまともな釣果を得たことというのはほとんどない。ついでに言えば、ルアー釣りも一緒で、あれに使うトレブルフックってどんなものがいいのかというのがわからず、結局、釣具屋に行って、いちばん安いやつを買うというようなことを繰り返している。

だから、鉤のデザインとその特徴などというのはこれからの釣りにはかなり参考になりそうだ。

この世にどれだけの種類の鉤があるのかは知らないが、ほとんどの鉤のデザインというのは、伊勢尼、袖、狐の3種類がベースになっているそうだ。



そして、この本によると、釣り鉤で重要なのは、鉤の曲がりとハリ先角度であるという。
鉤の各部位の名称は以下のとおりだ。



曲がりとは先曲がりと腰曲がりを合わせて言う。先のほうが大きく曲がったものがスプロートベンド、腰のほうが大きく曲がったものがリテイナーベンド、中間をラウンドベンドという。なぜかここだけ英語が使われている・・。
曲がりが前にあるほど鉤は折れにくい。しかし、刺さりこんだ時に抜けにくいのは後ろに曲がりがあるほうらしい。
ハリ先角度とは、鉤先が引かれる方向(鉤先とちもとを結んだ線)と鉤先が延長方向の間にできる角度をいう(がまかつ独自のネーミングだそうだ)が、この角度が小さいほど魚の口元にかかりやすく、アワセの力がかかりやすい。魚の口元にかかりやすいというのは、口の中に入った釣鉤が口の中をすべり、口元まできて鉤掛かりするということだそうだ。



逆に、ハリ先角度が大きくなると、魚の口の中で掛かりやすく、すっぽ抜けが少なくなる。
基本デザインの鉤をそれに当てはめてみると、伊勢尼型はハリ先角度が小さく、口掛かりがよい。袖型はハリ先角度が大きく、すっぽ抜けが少ないということになる。

それぞれ、二律背反の効用があるのでその匙加減を対象の魚に合わせ、それに加えて、おそらくデザイナーのセンスと消費者のわがまま(多分これが一番大きな要因だと思うが・・。)で釣具屋の壁一面ほどもある種類の鉤が生まれてくるのだろう。がまかつだけでも数千種類の鉤があるそうだ。

じゃあ、どの効用を取ればいいのか、それは結局釣り人の判断に任されることになるのだから、この本を読んでも決して釣りが上手くなるわけではないのだ。

そして、鉤に注がれる技術の幅の広さというのにも目を見張らされる。その前に、製造工程だが、僕の感覚では、長い線材が機械の中でせり出してきて一本ずつ成形されて出来上がるものだと思っていたが、本当の作り方は、まず鉤の長さに合わせて切断された線材を並べて一気に加工してゆくそうだ。僕が持っている鉤の中で一番小さいものはたなご鉤だが、あんな小さなものも同じような作り方をするのかと思うとあまりの繊細さに驚きを隠せない。
そして、技術のほうだが、素材はどんどん進化して、今ではドリルに使うハイス鋼まで使われている。
また、メッキの技術は鉤先とほかの部分で厚みを変えて鉤先の鋭さを確保するということまでしているそうだ。また、あの、ナノスムースというフッ素樹脂加工も最新の技術らしい。鮎バリもイカリの形が崩れないようにチモトに微妙な角度をつけたり、抜けないようなギザギザの加工を施しているそうだ。そのほか、鮎バリというのは最新技術の宝庫だそうだ。

日本の釣鉤の品質の良さは別格で、これはもう40年近く前の体験だが、バス釣りを始めたころ、それは日本で何回目かのルアー釣りブームのころであったと思うが、ルアーを買ったらまずは鉤を研ぐというのが当たり前だった。オイルストーンというものの存在も初めて知ったのだが、買ったばかりのルアーのトレブルフックというのは針先がまったく尖っていなかったのでタックルボックスには必ず入れておくべきもののひとつであった。子供心には何の疑いもなく、また、鉤を研ぐという行為自体が物珍しく、当たり前の作業だと思っていたけれども、よく考えれば、すでにその頃でも日本の釣鉤で研がないと使えないというものはなかったはずだ。
それからしばらくして日本のメーカーもトレブルフックを作るようになったけれども、その鋭さは天と地以上のものであったのだ。
うちの父親も、マスタッドというどこの国の鉤か知らないが、「これは外国製の鉤だからよく釣れるんだ。」と言っていたことがあったが、あれもきっとよく見たらそんなにいい鉤でもなかったのではないかと思う。その後に買ったマスタッドのトレブルフックはやっぱり研いでから使ったものだ。
海外に行ってもどこでも日本製の釣鉤が席巻しているというのはなるほど納得というものだ。

しかし、加太の漁師が使っている鉤を拾ったことがあるけれども、何の輝きもなく、いったいいつまで使っているのかと思いたくなるような代物だった。微妙な角度も腕さえあれば関係ないというのが現実なのかもしれない。しかし、その腕がない釣り人はいつまでも釣鉤はじめ様々な道具に翻弄される。
その心理を上手く突いてメーカーは商売を展開するのだから、一番腕のいい釣り師はメーカーの人たちだというのが結論だ。



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