外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

2019年チュニジア・トルコ・イタリア旅行記(28)~イタリア南部バジリカータ州への旅・前書き~

2020-10-07 08:22:28 | イタリア

 

コロニャに弄ばれているうちに、今年も気が付いたらもう10月。しかも、あっという間に1週間が過ぎ去ろうとしている。朝晩かなり寒くなって、ホットワインが美味しい季節になった。最近は、ラムに浸けた柿をラムごとワイン(赤でも白でもOK)に入れて作るホットワインがお気に入りだ。林檎ジュースで甘みを足して、シナモンスティックやクローブ(ホール)なども入れるのだが、クローブはつぼみ部分を上にして縦にぷかぷか浮くことが多く、茶柱感が強いので、毎回「あっ、ホットワインの茶柱が立った」と心の中でつぶやいてしまう。縁起が良さそう(?)

 

 

クローブ、立ってる子と寝てる子がいる。(今回の写真はスクショ分を除いて全てネットから拝借したもの)

 

こっちのクローブは、茶柱ではなくコロニャ感を出している。

 

 

気温の急激な変化のせいか、最近何をするのもしんどくて、毎日ご~ろごろごろごろして、ブログの更新をサボっていたのだが、いい加減に旅行記を書き終えなければ、さらに年をまたいでしまう・・・ということで再開。今回からはイタリア南部への旅について書く。

 

チュニジアからトルコ、トルコからイタリアに入ってフィレンツェで5泊した後、これまで訪れたことのなかった南部のバジリカータ州に向かい、マテーラ、アリアーノ、ポテンツァに1泊ずつしてから北上し、ローマのフィウミチーノ空港から帰国便に乗った。つまり、この南部への旅は今回の3か国をめぐる旅の最後の締めくくりと言える。

 

フィレンツェ、ポテンツァ、マテーラ、アリアーノの位置関係を見てもらおうと、慣れないスクショをやってみたが、よくわからない・・・アリアーノの上にポテンツァとマテーラがあることが分かるだろうか。

 

 

マテーラの洞窟住居はユネスコ世界遺産に登録されており、日本でもある程度知られている国際的な観光地だが、今回の私の本命の目的地は、観光地としては無名のアリアーノだった。ポテンツァはバジリカータ州の州都で、アリアーノからローマに戻る途中にあったから便宜上宿泊したに過ぎない。

 

アリアーノは小さな町で、ウィキペディアによると、人口は1000人足らず。宿泊施設は一応あるものの、鉄道は通っておらず、バスもあまり通らない僻地なので、ここに観光に行く外国人はあまりいない。私が敢えてこの町に行こうと思ったのは、ここがカルロ・レーヴィの流刑の地だったからだ。

 

カルロ・レーヴィはこの人。

 

 

カルロ・レーヴィ(1902~1975年)は、イタリアを代表する作家の1人で、画家でもある。反ファシズムの政治活動が原因で、ファシスト政権下の1935年から1936年にかけて、北部の都会トリノから南部の寒村アリアーノに流刑に処された。この時の様子を描いた彼の代表作「キリストはエボリで止まった」(Cristo si e' fermato a Eboli、邦訳あり)には、当時のこの地の農民たちが極貧の暮らしに耐え、マラリアの蔓延に苦しみながら、前キリスト教的な魔術や妖精などが日常のあちこちに顔を出す独特の世界に閉じこもって暮らす様子が描き出されている。ちなみに、エボリ(エーボリ)は、カンパーニア州の人口4万人弱の町で、当時のルカーニア地方(現在のバジリカータ州)への入り口とみなされていたようだ。タイトルの「キリストはエボリで止まった」は、「文明の恩恵はエボリで止まって、アリアーノにはたどり着かなかった。村の農民たちは『キリスト教徒』(=1人前の人間)とはみなされず、人間以下の扱いを受けて搾取に苦しみながら、太古の昔から綿々と受け継がれる独自の文化の中で生きている」という意味が込められていると思う。

 

 

慣れないスクショ第2弾。エボリとアリアーノの位置関係がわかる地図を出そうと思ったら、車で移動するためのルートが出てしまった・・・当時はこんな道路はなく、山道を行くしかなかったはず。

 

 

本の表紙。ジャケ買いしたくなる? ならないか・・・

 

 

私はかつて通ったフィレンツェ大付属文化センターのイタリア語講座でこの本の一節、ふいごを使って上手にヤギの皮を剥ぐ老人「ヤギ殺し(ammazzacapre)」が登場するくだりを読んで感銘を受け、その後辞書を引き引き1冊全部を読み終えたのだが、最近また読み返しているのだ。但し、1人で読んでいるわけではない。

 

私はしばらく前から北海道に住む友達(元々は友達の友達)に週1回スカイプでイタリア語の文章読解を教えていて、そのテキストとしてこの本を使っているのだ。彼女はイタリア留学経験者で、文法も会話も一通りこなす上級者なので、文法の授業などはやらず、1冊の本を選んで彼女が少しずつ和訳し、私がそれを添削して解説するという方式を取っている。彼女とのレッスンを通じてこの本を改めて読み、その世界に入り込んでいるうちに、植物がほとんど生えない白い粘土質の谷に囲まれているという、世界の果てのようなアリアーノ(本の中では「ガリアーノ」に名前が変えられている)に行かなければいけない気がしてきたのだ。私は昔から荒涼とした風景に心惹かれる傾向があるのだが、それだけではなく、彼の地は自分の人生が通っている道の途上にある気がしたのだ。こういうことは、私には時々ある。

 

私がアリアーノに旅すると言うと、この友達も興味津々で関連情報を調べてくれた。また、フィレンツェで世話になった友人も、宿泊施設や交通機関等を色々検索して、親身になって協力してくれた。アリアーノにはマテーラからバスが出ていると思われたが、ネットでは確実な情報は見当たらなかったため、まずマテーラに行って1泊し、現地でアリアーノ行きのバスの有無を確かめ、それによって翌日以降の予定を決めることにした。

 

そういうわけで、チュニジアとトルコでの疲れをフィレンツェで癒した後、私は新たに未知の世界に旅立ったのだ。前書きがやたら長くなったので、フィレンツェからマテーラに移動した時の話はまた次回。ああ、なかなか終わらない・・・

 

 

(おまけ)

 

「Il Cristo si e' fermato a Eboli」を原作とした映画の予告編(音声イタリア語・英語字幕付き)

 

 

カルロ・レーヴィを紹介するイタリア国営テレビRAIUNOのニュース番組の録画(イタリア語・字幕なし)

 

 

カルロ・レーヴィが描いたとされる猫の絵。顔がコワい・・・

 

(続く)

 

 

コメント (2)
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