タンザニアのサバンナに住むキンイロオオカミの子育てをテレビで観た。
キンイロオオカミは肉食獣で、身体の大きさは中型犬くらい。
サバンナでは他の肉食獣に比べて、さほど大きくない。
小さなキンイロオオカミが、強敵ひしめくサバンナで生きていくのは大変だ。
そこでキンイロオオカミは、生き抜く為に自分の子ども達に生きる術を教える。
身体を機敏に動かして獲物を捕まえる方法や、獲った獲物を隠しておくことなどだが、たくさん子どもがいると中には「大丈夫かな?独り立ちできるかな?」というのもいる。(人間も同じ!?)
ところがキンイロオオカミの子育ては、落ちこぼれがゼロなのだそうだ。
子育て終了の時期になると、キンイロオオカミの両親は、子どもたちに卒業試験をする。
そして、めでたく試験に合格した子どもは、独り立ちさせる為に冷たくあしらって自分たちの元から追い払う。
ところが試験に合格できなかった子どもには、優しく毛繕いなどしてやって、まだ両親のそばで暮らすことを許す。
そして、さらに時間をかけて試験に合格できるように教育をし続け、最終的にはめでたく、その子も独り立ちしていった。
というわけで、キンイロオオカミの子育ては落ちこぼれゼロなのだそうだ。
子どもを産んだはいいが、虐待したり育児放棄するような人間より、キンイロオオカミのほうがはるかに偉い。
番組では3頭の子どものうち、落ちこぼれた1頭が時間をかけて育てられていた。
ところで我が家も番組に登場したキンイロオオカミと同じく三人の子どもがいる。
三人のうち一人は独立し、もう一人もいずれ家を出て行くだろう。
そして最後まで残っているのが、障害のある長女だ。
長女は就労支援施設で何年も頑張って、昨年やっと一般就労することができたが、今はコロナの影響で仕事が無くなりずっと休んでいる。
毎日、家事など手伝ってもらっているが、有り余るほど時間がある為、私や夫が作った問題で勉強をしている。
その一つは漢字練習。小学校6年までの漢字の練習をする。
小学校6年間の漢字の読み書きができれば、日常生活でほとんど困ることはないと思う。
長女は漢字が好きなので嫌がらずにコツコツと毎日取り組み、日常生活の中で使う漢字は、ほとんど読むことができる。(ただし意味まで理解できているかは疑問だが・・)
問題なのは数字が絡んでくるもの。
それはお金の計算だったり時間の観念などで、生活していく上でどうしても必要なことなのだが、長女には難しい。
いずれ世の中は現金を使わないキャッシュレスになるだろうし、アナログ時計が読めなくてもデジタル時計があるから時間はわかる。
しかし、実際の生活ではたとえキャッシュレスで現金が必要なくても、見境なく買う訳にはいかない。
自分の持っている金額で、どれくらい買えるのかが分からなければいけない。
また時間は、デジタルの表示を見ればわかるとしても「今から30分後に集合」などと言われるとわからなくなってしまう。
だから現金や時計を使った勉強をしている。
他には地図で地名の場所を覚えることとか、公共機関を使っていく場合、時間通りに行くには何時に家を出なければいけないかとか。
とにかく生活する上で必要なことを教える訳だが、これがなかなか理解できない状況が続くと、娘はもちろんだが、教える方も嫌になってくる。
「あ〜こんなこともう20年以上やってるなあ」という絶望的な気分になったりする。
とはいえ、家事はずいぶん上手にできるようになってきた。
部屋の掃除機かけは、もう任せられるくらい綺麗にかけられるようになったし、洗濯物を干したり畳んだりも任せられる。(たたむのはホントに上手)
しかし、このままいつまでもずっとそばに居て、娘を守ってあげることはできない。
順番的には私たち親が先に死ぬ可能性が限りなく高い。
というわけで、キンイロオオカミさんを見習って、時には優しく時には厳しく、長女がいつの日か独り立ちできることを夢見て今日もまた教えている。
でもやっぱり・・・早く仕事が始まって欲しいなぁと思っている。