ハニバニの受難<その1>
競争心メラメラで
ハニバニの受難<その2>
ハニバニ杖デビュー
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時は日本から出国の日。
滞在時間が長かったのか短かったの定かでないまま
私とハニバニは本当にもう帰りたかった。
確かに今回、やり残したことが多くて後ろ髪をひっぱられるような気持ちで迎えた日でした。
こうなったらもう気分を変えて、また来年新たな気持ちでやり直すしかない。
私とハニバニは出国カウンターへラゲッジを預けるために上の階へ上がらなければなりませんでした。
目の前にエスカレーターがあり、エレベーターはちょっと向こう側にありました。
私はエレベーターの方が安全だからと言ったのに
「近くにエスカレーターがあるし、ヒョイと乗ってしまえば歩かなくていいから」
と、目の前のこの長いエスカレーターへ乗ることにしたハニバニ。

(写真お借りしました)
確かにちょっと向こう側のエレベーターへ歩いて行くより、これに乗ってじっとしていれば楽かも。
そう思ってそろそろと移動し始めました。
ハニバニがいるちょっと数段下の方に私がいる感じで、中盤ぐらいまで登ったところでした。
ハニバニの顔が数段下の私のラゲッジの横を通過して
その時初めて彼が転倒したんだと気が付きました。
彼は自分のラゲッジを左手で支え、杖を右手に
そんな両手ふさがりなところに段差で杖が落ちてしまい、体ごとバランスを崩したと思われます。
あっという間のことでした。
咄嗟に私が彼の腕を掴むことができたのは
私の反射神経がまだまだ衰えていなかったということなのか。
それがストッパーになって、彼の大きな体はそこから5,6段下で止まりました。
でも彼はすでに逆さまになっていました。
肩の骨を折ったかと思って、ゾッとしました。
そんな中、止められなかった彼の杖だけが下の方へ
カラカラカラカラと、冷たい音を立てて落ちてゆきました。
それを見ていたカップルが大慌てで杖を拾ってくれて
エスカレーターを登ってきてくれて彼の安否を気遣ってくれました。
とてもありがたかったです。
とりあえず、あんなドラマチックな転倒をした張本人は無事で何もなかったみたいに起き上がり、
そのまま出国カウンターへ到着しました。
私は彼の無事を安堵する域を超えて
怒りと恐怖で震えながら彼を罵倒しました。
ゴメン、僕はもう大丈夫だから落ち着いて
とハグしてくれたけど、その顔を見たら鼻に擦り傷、腕にもかすり傷がありました。
ぼんやり彼の後方にある
例のラゲッジと杖を見つめていたら
そこに悪魔がいてクスクス笑ってた気がしました。
そしたら急に私の脳裏には
今度は何が起こるんだろう
もしかしたら帰りの飛行機が落ちるとか?
私たちもう家に帰れなくなるんじゃないの?
という悲惨な妄想が炸裂しました。
あまりにも怖くなって、
この強気な私でさえ妹にLINEを送って「もう旅行なんてしたくない」と弱音を吐いたほど。
僕は大丈夫なんだけどさ、恥ずかしかったよ
空港はさっきのビデオ撮ってないかな、見てみたいな
私のパニック状態をよそに、そう呑気なことを言えるほど彼は本当に大丈夫だった模様。
しかしその後、広島でやっと見つけたレアなウイスキー(ハニバニの友人のリクエスト)を
手荷物検査場で没収されてしまい、今度はハニバニの方が怒りで震えておりました。
でもまあそれはこちらのうっかりしたミスだったので、何も言えねー。
お互いに散々な思いのまま、とりあえずラウンジに避難しました。
そこではもう私は疲れ果てて、無言でご飯を黙々と食べ続けました。
食欲がある限り、私は大丈夫なんだろうなと思えました。
横でハニバニは、美味しそうに東京ばな奈を頬張っていました。
もう本当に早く帰りたい。
こんな散々な思いをしたのにもかかわらず
無事にこちらへ着陸して、チャーリーを迎えに行き、家へ戻ってきたら今までの辛かった思いが全て
チャラ
精神的にたくましいなあと思います。
気を取り直して次の帰国の予定を立てる私とハニバニなのでした。
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