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抜き書き帳『樋口一葉』(その2)

2016年06月03日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
《にごりえ》明治28年9月

【71ページ】
----、頸(えり)もとばかりの白粉(おしろい)も栄えなく見ゆる天然の色白をこれみよがしに乳のあたりまで胸くつろげて、烟草すぱすぱ長烟管(ながぎせる)に立膝の無作法さも咎める人のなきこそよかれ、----。
【74ページ】
----、お前は思い切りがよすぎるからいけないともかく手紙をやってごらん、源さんも可愛そうだわなと言いながらお力を見れば烟管掃除に余念のなきかうつむきたるまま物いわず。
やがて雁首をきれいに拭いて一服すってポンとはたき、またすいつけてお高に渡しながら気をつけておくれ店先で言われると人聞きが悪いではないか、----。
【87ページ】
もう日が暮れたに太吉はなぜかえって来ぬ、源さんもまたどこを歩いているかしらんとて仕事を片づけて一服吸いつけ、苦労らしく目をぱちぱちつかせて、更に土瓶の下を穿(ほじ)くり、蚊いぶし火鉢に火を取分けて三尺の椽に持出し、拾い集めの杉の葉を被せてふうふうと吹立れば、----。

[Ken] 「にごりえ」に出てくる「烟草」は「烟管」(煙管の旧字)で吸っていたり、煙管掃除をしているので、明らかに刻たばこですね。芸妓さんや遊郭の姉さんたちの振る舞いや雰囲気がよく描かれていると思います。87ページの火鉢と刻たばこは、よくお似合いの景色です。和文の流れがとても心地よく、樋口一葉さんの表現力には本当に脱帽です。(つづく)
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