落語的ガチンコ人生講義
立川談四楼
新潮OH文庫・562円
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落語もできる、小説家・立川談四楼が、大学での一年間の講義集。
いまどきの若者と、古き風習の塊のような落語家との、価値観のぶつかり合い。
ある女子の学生のレポートに・・・・・寄席での前座の仕事ぶりをみて、
「前座さんの姿を見て、ハッとしました。私たちと同世代ではありませんか。
ノンキな学生と、厳しい修行の前座さんとの何という違いでしょう。
ああ、こんな形もあるのだと、私は高座返しに出てくる前座さんばかり
尊敬のまなざしで見つめていました。」と。
これだけを、感じさせただけでも、この講義は成功である。
でも、最初に、専修大学文学部教授、板坂則子さんが、
最初に談四楼師匠に持ちかけた時の話を綴ると・・・
「文学部古典特殊講義Ⅱ、という分類になります。
対象は、二、三、四年生で単位は四ですから小さくありません。
夏冬の休みを除くと、ほぼ週に一度は通っていただくことになります」
「来年は、落語家三十周年だそうですね」
「つきましては、報酬がとっても少ないですが」
「落語家であればどなたでもということでお願いしているのではありません。
文学部ですから、師匠の「落語もできる作家」という部分にお縋りしているのです。
デビュー作の「シャレのち曇り」、エッセイ集「どうせ曲った人生さ」、短編集「石油ポンプの女」
そして最新長編「ファイティング寿限無」を拝読した上でお願いしているのです。」
「もしお受けいただけるなら関西はともかく、東邦初の落語家講師誕生ということになります」
「それに文学部ですから、女子が七割近くになろうかと思います。」
と、ヨイショの見本みたいな講師へのお誘いが素晴らしい。
ほんと、営業の鑑みたいな話の運びよう、給料とか勤務の束縛時間とか、
最低限、おさえておかなければいけない事は伝えながら、
気持良く、承諾して頂くべく、心地良い美辞麗句が並ぶ。
でもその後、「先生は、先生の価値観の押し付けるだけである。」と言う生徒たちに、
一年間、居直って講義し続けた談四楼さんに、拍手喝采でおます。
教育とは、案外、この事ように、気力、体力と信念のいることですな。
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