ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

砂の降る教室~石川美南

2018-03-06 03:04:05 | 本の少し
砂の降る教室―石川美南歌集
クリエーター情報なし
風媒社

☆☆☆

短歌とは不思議なものです。
その歌自体が主張するときと、歌集の中で連歌として味のでてくるものと、
この、石川美南さんの場合は、後者。

高校時代から始められ、大学時代に短歌会に入会されて活躍。

歌集には、一章と三章では比較的最近の歌を、第二章では古い歌をとありますが、
発刊が2003年(当時作者、23才)、若いですな。

その初々しさと、それを覆い隠す技法の堅実さには驚く。
今をときめく将棋界の藤井聡太五段みたい、基礎に立った若手、新人。

と良いながら、柔らか目が好きな私には、チョイ視点が違うのか。
選んだ歌も、少な目でおます。

六着のコートを連れてクリーニング店へ繰り出す 春となるべし

よく磨けばちょっと奇麗になるやうなならないやうな朝の洗顔

スプライトで冷やす首筋 好きな子はゐないゐないと言ひ張りながら

おまへんちの電話いつでもばあちゃんが出るな蛙の声みたいだな

グリーンピースの缶づめ好きで何が悪い 小石のやうな意地を張りをり

虫捕りの少年のごとき瞳して日々訪ね来る祖父の碁仲間

「二、三年寝てゐた方が良いでせう」春のゆるみゆく内科医の声

曇ったら違ふあそびをしませうよ しづしづと顔寄せてくる犬

教科書を売りて別れを告ぐるとき古書店店主しづかに笑ふ

傘のほねが広がるときのうつくしさ 詩の事ばかり話して帰る

 書棚より賢治の詩集抜き取れば古書店店主しづかに笑ふ





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