![]() | 牧水の恋 |
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文藝春秋
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☆☆☆☆
牧水の時代は、こんな好き好きの恋歌、短歌で良かったのか。
今の短歌は、悩み苦しむのは同じかもしれないが、牧水の歌、
好きです、好きです、ヨシコさん、(懐かしい三平さんのフレーズ)
全編、ラブレターの様な、のぼせあがった歌、一辺倒に思える。
見もしらで昨日おぼえし寂しさと相みしのちのこの寂しさと
寂しさは無間の恋の青海のそこに生ふて美し貝かや
ふと虫の鳴く音たゆればおどろきて君見る君は美しう睡る
雲見れば雲に木見れば木に草にあな悲しみの水の火は燃ゆ
ともすれば君口無しになりたまふ海な眺めそ海にとられむ
君かりにかのわだつみに思はれて言ひよらればいかにしたまふ
短かりし一夜なりしか長かりし一夜なりしか先づ君よいへ
わかれきて幾夜経ぬると指折れば十指に足らず夜の長きかな
ゆるしたまへ別れて遠くなるままにわりなきままにうたがひもする
けふ見ればひとがするゆゑわれもせしをかしくもなき恋なりしかな
山に来てほのかにおもふたそがれの街にのこせしわが靴の音
われになほこの美しき恋人のあるといふことが哀しかりけり
汝が弾ける糸のしらべにさそはれてひたおもふなり小夜子がことを
若き日をささげ尽くして嘆きしはこのありなしの恋なりしかな
秋に入る空をほたるのゆくごとくさびしやひとの忘れぬかな
はじめより苦しきことに尽きたりし恋もいつしか終わらむかな
五年にあまるわれらがかたひらのなかの幾日をよろこびとせむ
一日だにひとつ家にはえも住まず得忘れもせず心くさりぬ
ああなんと、未練たらしい、心の底を吐露した歌ばかり、
明治の時代はこんなのが許された時代だったのか・・・・。
現代は自由と言われながら、自由恋愛、恋沙汰には、世間様の声は厳しく、
バッシングの山である。
恥ずかしくもあり、羨ましくもあり、
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ