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あのNHK短歌でお馴染みの、カン・ハンナさんの歌集。カンさんの少し韓国っぽい日本語大好きです。韓国と日本の間で戸惑いながら精一杯生きている心の揺れを短歌でつないでいる。難しい言葉を使わなくて素直に詠んでいるカンさんの短歌は風のごとく肌に感じることができる。
そんな素直さにあふれた歌は。
神様に会いにゆく日を覚えたいカバンの中に御朱印帳入れ
百円のインスタントラーメンに卵を一つキムチを添えて
「誰よりも優しく賢く生んだのに寂しくさせる子」母がまた言う
「泥棒に頭のなかは奪われない」ソウルの父の手紙の追伸
立ち寄った商店街にて小銭さえあればもらえる幸せが舞う
好きですと口に出す前、チゲのようにコクが出るまで煮込んでください
夢は見栄に似ていて見栄は嘘に似る 夢が嘘になる三段論法
夏の夜のコップに付いた水滴が涙のようにストンと落ちる
銀座線で揺られた未練を乗り換えの南北線に引きずるなんて
持ち帰る紙袋から焼きたてのたい焼きの尾が揺れる幸せ
茶碗蒸しの蓋のまるさがあいまいで今日は誰かを好きになりそう
一首ずつ我が歌を詠む日々こそが日本で生きる証になれば
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