子曰く、「吾いまだ剛者を見ず」。あるひと対えて曰く、「申棖なり。」子曰く、「棖や慾あり、いずくんぞ剛を得ん」(公冶長)
先生はおっしゃった。「わたしはいまだに強い者を見たことがない」。あるひとが答えた。「申棖は強いですよ」。先生が答えた。「彼は欲がある。強いとはいえない」
本当に強いものには、欲がない。あるいは、とても少ない。君子はそうでなくてはいけないと、孔子は言っているのでしょう。
たとえば、大きな責任を負っているものが、苦しい欲にかられて、職務を汚したりすれば、どれだけのひとが苦しむかわからない。本当に強いものは、欲にかられて自らの職務を忘れたりはしない。どのような窮地に立たされようとも、自らのしなければならないことを、最優先する。それが本当の剛者だといっているのです。
小人は、目の前ににんじんをたらされれば、容易に職務を忘れて飛びつく。その欲をつかれて、あらゆるものがせめて来る。そうなれば、破滅の事態を招きかねない。
本当に、大きなものを背負わねばならない君子には、欲があってはならない。それができるものこそ、本当に強いものなのだと、孔子は言っているのです。
それは体力でも財力でもない。愛なのです。愛が一番強い。それは不動不壊の真実だからです。それを信じていれば、自らのものを全て与えても、自分の中に全てがあるということがわかる。だから愛は、欲にかられない。
本当に強いものは、真実、愛する人だということです。