世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

菜の花

2007-06-24 06:50:37 | 画集・ウェヌスたちよ

新聞連載させていただいた、12枚の作品の中で、一番気に入っているものです。

私の絵は自己流ですが、こちらから勝手に師とあおいでいるのは、見てもわかるとおり、サンドロ・ボッティチェリです。この絵も、首の曲げ方なんか、ヴィーナスにそっくりでしょう。

ほかに、若い頃に決定的な影響を受けたのは、漫画家の萩尾望都です。高校の頃のイラストは、ほとんど彼女のコピーでしたね。「ポーの一族」や「トーマの心臓」を、何度も何度も繰り返し読みました。

現在の私の書棚には、彼女の本は「訪問者」1冊しかありません。「マージナル」までは、ほとんどすべてを買い揃えていたのですが、いつかしら、見るのが苦しくなって、見なくなってしまいました。本棚にあれほどたくさんならべていた彼女の本は、どこに行ってしまったんだろう?

彼女の作品には、親に殺される子供、というパターンがよく出てきます。「銀の三角」のパントー、「マージナル」のキラ。どちらも、無慈悲なほど冷たい親に、抹殺されている。

若い頃、彼女の作品に心引かれたのは、わたしもまた、無慈悲な親のような存在に、常に抹殺され続けていたからでした。何をしても、完璧に認めてはもらえなかった。苦しいほどに、否定された。どんなにがんばっても、ないもののように黙殺されていた。あの絶望的な孤独が、親に殺され続けるパントーやキラに投影され、響いたのだと思う。そして響きすぎて、あまりに苦しく、本を手元に置くことさえできなくなった。

本を失ってしまったのは、あれらの物語が、あまりにも苦しすぎる真実を見抜いていたからだと思う。

才能のある娘は、絶対に社会から拒否されるのだと。

現在の彼女の作品を、時々書店で手にとります。でも、見ることはできない。彼女は今、完全に壊れていると思うから。彼女は、無慈悲な親に殺されてしまったと、思うから。

娘が、その才能で、よきものになることが、この世界では絶望的にできない。やろうとすれば、おそろしいほどに壊される。

彼女はそれを、自ら今、表現している。

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