世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

双子の星

2012-06-02 07:29:19 | 薔薇のオルゴール

宮沢賢治の童話「双子の星」から、ポウセ童子とチュンセ童子です。色鉛筆とパステル。まあ、わたしなりのイメージで描いてみました。童子というと、何となく東洋的なイメージがして、黒髪に、きれいな着物のような服を着せてもよかったのだけど、なぜか、頭の中に、薄い黄色の髪をした目の青い少年が現れてきて、描いてみたらこうなりました。
でも、こうして、そっくりな顔を二つ並べてみると、二人が違う人物とは思えませんね。なんだか同じ人間を二つ並べて合成してるみたいだ。

月の世の物語・余編、「繭」で、二つ頭の虎というのを出してみましたが、ちょうどその逆だなあ。あれはひとつの体に頭が二つあって、そのどちらにも人格が備わっていましたが、この双子のお星様は、一人の人格が、ふたりの人間を同時に生きているという感じだ。双子とは不思議だなあ。もちろん現実の双子には、そんなことはありませんけどね。姿かたちはそっくり同じでもそれぞれに違う人格を持っている。

まあとにかく、賢治の美しい言葉から、少し引用しておきましょう。

   *

王が云いました。
「いやいや、そのご謙遜は恐れ入ります。早速竜巻に云いつけて天上にお送りいたしましょう。お帰りになりましたらあなたの王様に海蛇めが宜しく申し上げたと仰っしゃって下さい。」
 ポウセ童子が悦んで申しました。
「それでは王様は私共の王様をご存じでいらっしゃいますか。」
 王は慌てて椅子を下って申しました。
「いいえ、それどころではございません。王様はこの私の唯一人の王でございます。遠い昔から私めの先生でございます。私はあの方の愚かなしもべでございます。いや、まだおわかりになりますまい。けれどもやがておわかりでございましょう。それでは夜の明けないうちに竜巻にお供致させます。これ、これ。支度はいいか」

(『双子の星』宮沢賢治)

   *

双子のお星様のお宮がある空には、大切なことや美しいことを教えて下さる、美しい王様がいるのでしょうな。その方はお空のどこにいらして、どんなことをなさっているのでしょうな。賢治がこの美しい童話を書いてから、何年経ったかはしりませんが、もうそろそろ、いろんな人が、一体だれが王様だったのか、わかっているでしょうね。そんな気がします。

あと、これも好きなので、「星めぐりの歌」も引用しておきましょう。美しい歌です。これ確か、曲がついていると思う。Youtuveで検索すると、出てくると思いますよ。

   *

あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あおいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。

オリオンは高く うたい
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。

大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うえは
そらのめぐりの めあて。

  (『星めぐりの歌』宮沢賢治)

   *

きれいですね。透明な水晶でさえ、自分を濁っていると恥じるほど、透き通った風が吹いていそうだ。美しいことばで、賢治も本当に大切なことは何なのか、本当の幸いとは何なのかを、懸命に言おうとしている。
昔から、賢い人たちは、どんなにかたくさんの苦労をしながら、地上にその真実の言葉を記そうとして生きてきたのです。以下は論語ですが。

   *

子曰く、政をなすに徳をもってす。譬えば北辰のその所にいて、衆星のこれに共かうがごとし。(論語・為政)
先生はおっしゃった。政治というものは、決して変わることのない美しいまことの愛の心によってするものだ。たとえば北極星が動くことなく空にあり、星々がそれを目当てにして動いていくように。

   *

オリオンは高く うたい
つゆとしもとを おとす…






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