世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

野菫

2012-06-07 07:04:11 | 詩集・貝の琴

愛だけで ただすきだというだけで
ものごとをやっていると
なんともすがすがしくて 気持ち良い

まるで透明で清らかな流れの中に生きている
水晶のような魚のきれいなここちがして
気持ち良い

生きることや 自分として在ることが
それはそれは 快い
薄紫の菫が お日様をいっぱいにあびて
やわらかい土から しっとりとした水をのみ
闇に埋もれた 小さな鉱石の甘い雫を食べて
体中に歓喜が満ち足りて
あふれんばかりに うれしくて
ああ 涙がとまらない
幸福に弾けそうになる

ただちょっと残念なのは
ひとりぼっちだということだけかなあ
幸せなことを 誰かと分かち合いたくても
君はわたしのそばにいないから
君ならば どういうふうに
この幸せを歌うだろう
きっとそれは美しく歌うだろう
そしてそれは わたしと全く違う歌だろう
君はこの幸せをどんなふうに歌うだろうか
聞いてみたいけれど

野菫のように小さくなって
青い野の隅に隠れて
わたしは静かに歌を歌っている
ああ今日も 神様に向かって
まっすぐに額をあげて
挨拶をすることができる
なんて幸せなんだろう



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