世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

月の世の少年

2012-06-16 07:48:41 | 画集・ウェヌスたちよ

月の世の少年です。この人は「船」編に出て来る少々、人間に苦い思いを抱いていて、よく皮肉を言う少年。多分、仕事上でいろいろ苦労しているのでしょうな。

これは、自分の担当している罪びとの言い訳を聞いて、あきれているところです。
一体何したんでしょうね。その人は。

ちなみに、「おれは何もしてない。なんでもないんだ、あんなこと、みんなやってることだし」というのは、罪びとの常とう句だそうです。大体、月の世に落ちて来た罪びとは、担当者の顔を見たとたん、真っ先にそういうことを言うそうですよ。

以下は仕事を終えた彼と、友人の少年との会話。

「みんなやってることだから、か…」
「大体の罪びとは同じようなことをいうよ。実際地球では、多くの人が心の中でそう言いつつ、いろんな悪いことをやってる」
「それって、自分が恥ずかしくないのかなあ」
「そりゃあ、恥ずかしいさ。だから『みんな』のせいにするんだ。みんなやってることだからって。そして、人間はみんな、悪い奴なんだってことにしたいんだ。自分が悪いことをするから、人間はみんな悪い奴だってことにしないといやなんだ」
「そうだ。そうしないと自分が苦しいからなんだ。それで、よい人間が地上で生きることが苦しくなりすぎてる。よい人間ほど、悪いことをする人にねたまれて、とても苦しい目にあう」
「そういうことに関しては、人間はとても上手だよ。人をいじめるってことに関しては、見事に巧みな知恵と技術を持ってる。そういうことをやるから、実におかしな地獄に落ちることになるんだけどね」
「ほんとにね」
「で、その彼は今、どうなってるの?」
「沼でサンショウウオをやってるよ。今度は二百年くらいかかるってさ」
少年は、深いため息をつきました。




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