世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

Le Petit Prince

2012-06-06 08:01:43 | 薔薇のオルゴール

タイトルはフランス語で気取ってみましたが、ル・プティ・プランスと読みます。直訳すれば「小さな王子」。それを「星の王子さま」というかわいらしい名前の本にしてくれたのは、内藤濯です。
「大切なものは目に見えない」という胸にしみる有名なことばと一緒に、長く読み継がれているこの本、最近は新訳本や絵本なども出ていますですが、わたしは何となく、古い訳の方が好きです。2冊ほど、違う人の訳した本も読んでみましたけれど。

冒頭の切り絵は一応、てんこが描いた王子さまです。小さな薔薇も添えてみました。なんだかこのカテゴリには、薔薇がよく出てくるな。オリヴィエじゃないですよ。ちょっと似てるけど。マフラーと言うか、スカーフみたいなのを首に巻いている、星の王子さまです。

以下は引用。多分読んだことのある人はこのシーンを誰もが覚えていることでしょう。

   *

 王子さまはくたびれていました。腰をおろしました。ぼくはそのそばに腰をおろしました。すると、王子さまは、しばらくだまっていたあとで、また、こういいました。
「星があんなに美しいのも、目に見えない花が一つあるからなんだよ……」
 ぼくは、〈そりゃあ、そうだ〉と答えました。それから、なんにもいわずに、でこぼこの砂が、月の光を浴びているのをながめていました。
「砂漠は美しいな……」と、王子さまはつづいていいました。
 まったくそのとおりでした。ぼくは、いつも砂漠がすきでした。砂山の上に腰をおろすと、なんにも見えません。なんにもきこえません。だけれど、なにかが、ひっそりと光っているのです……
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ……」と、王子さまがいいました。
 とつぜん、ぼくは、砂がそんなふうに、ふしぎに光るわけがわかっておどろきました。ほんの子どもだったころ、ぼくは、ある古い家に住んでいたのですが、その家には、なにか宝が埋められているという、いいつたえがありました。もちろん、だれもまだ、その宝を発見したこともありませんし、それをさがそうとした人もないようです。でも、家じゅうが、その宝で、美しい魔法にかかっているようでした。ぼくの家はそのおくに、ひとつの秘密をかくしていたのです……
「そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」と、ぼくは王子さまにいいました。

(「星の王子さま」アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ作、内藤濯訳)

   *

大切なものは、目に見えない。にんげんはまだ、その大切なものが見えないから、まちがったことをしたり、ほんとうに大切にしなければならないものを、平気で壊したり、汚したりしてしまう。それで、とてもつらいことになってしまう。大切なものがないと、人間は何もかもを失ってしまうのだ。だって大切なものがないと、ほんとうに、何もないんだよ。それがないと、何もかもが嘘になってしまうから。
でもきっといつか、にんげんにも、大切なものがわかるようになる。それをどんなにか大切にしなければいけないかってことも、勉強してわかるようになる。そして、いろんなものを愛して、大切にして、一生懸命、みんなのために働くようになるだろう。ああ、どんなにすてきだろうね。そんなことになったら。みんなが幸せになる。

大切なものは、大切にしなくてはいけないんだよ。それは目に見えるお菓子やお金や素敵な首飾りや服や大きな家だとか車だとかじゃない。今の人間はそんなものがそれは好きだけどね。それはさびしいからなんだ。寒いからなんだ。見えないから、大切なものが、わからないから。

大切なものは目に見えない。けれど、感じることはできる。その幸せと言ったら、魂が割れるほどうれしいのだ。自分として生きること、それだけで満たされすぎるほど、満たされてしまうのだ。

大切なものは、本当に大切なのだ。その大切なものって、なんだろう?
それは、「ほんとうのこと」という名前のかわいい星なのだ。それは自分の胸の中で、不思議な軌道を回りながらくるくる自転している。ときどき小鳥のようにさえずって、魂を揺さぶる時がある。

愛しているよ。いつもいっしょにいるよ。








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