鳥音渡は、彼女が作り出した架空の詩人の一人である。かのじょは彼のために、かなりたくさんの詩を書いて残している。それをこれから少しずつ発表していこうと思う。
鳥音渡のモデルはかのじょ自身だと言ったが、もちろんかのじょよりはずっと恵まれている。一人っ子で両親に愛されて育った。才能のある子どもだったが、神経が細すぎて心を病み、勤め先を辞めて家事手伝いをしている。ここらへんは篠崎什に似ている。違うのは、心を許せる二人の友人がいることだ。
愛情を素直に表現しても、馬鹿にしない友達が二人いる。それだけで、鳥音渡は生きていくことができた。短い人生の間にも豊かな表現をすることができた。これはかのじょ自身が、夢に描いていたことかもしれない。
遠く離れている仲間とともに生きていくことができたら、どんなにうれしいだろうかと。
鳥音渡は瞳のきれいな詩人だった。曲がったことやずるいことがまるでできなくて、社会の落ちこぼれになった。詩を書くことによって、がんばって生き抜こうとしたが、結局は病で若くして死んだ。
「ガラスのたまご」を書いていた時、かのじょはまだ自分の運命を知らなかった。だが、何となく、風の中に感じるものはあったのだ。
明日から、第1詩集「銀の栗鼠」を、一編ずつ発表していく。かのじょが残した甘い愛の詩の世界を、しばらく楽しんでくれたまえ。