とまった時計の中で
死んだ地球の上に
ひとり立っていた
海は ガラスをどこまでもしいてあるように
静かに 動かない
風は流れのままに固まった ゼリーのような手触り
もう少しすれば きっと氷のように硬くなるだろう
ぼくは人形のように動かずに立って
岸辺から海を見ている
空だけが 動いている
菫色の空に 白い雲だけが静かに流れている
淋しいと思うことなんかない
地球が生きていた頃も
ぼくはこどくだった
友達はいたけれど
いつもぼくは ひとり
自分だけが皆と違うような気がしていた
動かない地球を 眺めているうちに
ぼくはひとり歩き出した
生きているのはぼくだけかな
ならばぼくにはしなければならないことがある
そしてぼくは 砂浜に落ちていた石をひとつとると
それに小さな詩を吹きこんで
空に投げたのだ
小さな石は空に飛びだした途端に
白い鳩になってかなたに向かって飛んでゆく
これでいい
そしてぼくは ベッドの中で目を覚ます
ほら いつもぼくはこうやって
世界をすくっているのだ
死んでしまった地球も
滅んでしまった人間も
焼きつくされた森も山も
干上がった海も
無残な血の流れた町も
すべては ぼくが見た夢になった
だから地球は まだ生きている
まだ間に合う
まだ助かる
すべては