うたうたい うたうたう
からからと 銅の鈴の中で踊るのは
悲しみでできた 翡翠玉だ
青くて 白くて 緑で
銅の玉の闇の中で
澄んだ光を静かにまとい
聞こえない意味の風を
ひそやかに胎に吸い込む
うたうたい うたうたう
銀の細いトンボは
白い雲から風がひねり出した糸で作る
神様が描いた風景画の
乾いた絵具の小さな割れ目のように
飛ぶ それは
誰も知らないもう一つの
本当の物語へゆくための
小さな入り口
うたうたい うたうたう
緑の小鳥が 枝に絡みつく頃
硬い花芽の中で眠っている紅は
知っている
花は咲くとき 自分の身が割れて
ああ 痛い とかすかに叫ぶことを
とりどりの季節の祈りのように それは咲くとき
甘くも苦い痛みを味わうことを
花に宿る紅の玉は 春の薄日の中に
ちいさくささやき続ける
うたうたい うたうたう
うたうたいは うたうたう
なぜ うたう
ちいさな 瑠璃の 頭骨の中で
金色の光の鮒が
ぼくのちいさな脳みそを
ちりちりと焼くものだから
あの 風景を焼く 夕日の光で
孤独のろうそくに灯る 白い月の炎で
いたくて くるしくて
うたうたい うたうたわずに いられない
ほほえんではいけないと 言わないでくれ
ほほえまずにいられない
目を閉じて思うのは君のことだけだ
幸せを 分け合うことが難しいのは
君がぼくを 怒っているのは
どうしても ぼくが歌いながら
笑ってしまうからだ
ほんとうは悲しいんだろう?
そう ぼくを見つめる 君の瞳が言っている
うたうたい うたうたう
悲しくなんかない