世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

あした

2015-10-08 04:00:39 | ちこりの花束

 どんなときにも、なにがあっても、あしただけは無尽蔵にある。
 それは人間にとって大きな恵みであるような気がします。
 目の前に、超え難い壁があって、何度チャレンジしても超えられなくて、失敗ばかりして、おちこんで。でもしばらくすると、何、あしたがあるさって、そう思うと、肩の荷もふと軽くなる。
 たいしたことじゃあないさ。あしたになればまた状況も変わるだろう。そしてひとのきもちもかわってゆく。自分だって変わってゆく。時は日々流れて行く。いつまでもこの悲しみが続くわけじゃない。
 だから今、今のこの痛みを、涙や歌に流してしまえば。あしたへの力が湧いてくる。あしたには、あしたの私がいる。
 「あした」はいつも、「今」を乗り越えるキーワードでした。たくさんの「今」の風を切り抜けてきて、その「今」の積み重ねが、このただ今の「今」の中にいる私。
 あれこれとたくさん失敗したわりには、それほど大きな成果があったわけではなく、ただ積み重ねてきた「今」の分だけ深くなった私がいる。
 そして私は今も、常に「あした」を見ながら、生きている。


(2006年8月ちこり37号、ミニエッセイ)


   

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