世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

青いりんご

2015-10-26 04:12:38 | 月夜の考古学・本館

リンゴ(セイヨウリンゴ) Malus domestica

 リンゴの詩を書くのは二度目ですが、今度のは青いりんごです。
 店頭などでは、王林などの品種が、青リンゴとして売られてますが、「祝い」などの種類もあるそうです。
 といっても、詩の中のイメージは、青空にとけているあわせ鏡のような地球のイメージなんですが。青空の向こうにあるもう一つの美しい地球。魂の地球。
 それを香り深い青いりんごに託してみたかったのです。
 苦しみの後で、一枚殻が脱げたように心が軽くなって、ひといきに越えられなかった壁を越えられるってことがあります。それは要するに、自分を知るってことなんですけれどね。
 若い頃は何でもできると思っていて、どん欲にあれもこれもと吸収し続けていました。本を読むのが好きで、自分の中にいっぱい知識をほうり込むのが楽しかった。映画もアニメも好きだった。たくさんの人が群がるおもしろそうな価値の周りを、わたしも物欲しそうな目で跳び回っていた一人でした。
 でも年をとって、ひとつもふたつも、山なんぞ越えてみると、今度は要らぬものを捨てにかかります。本当に必要なものしか、生きることには必要でないと思い始めます。だから本も、本当に魂に心地よいものしか読まなくなる。テレビで毎日のように叫んでいる歌や人のコメントも、心地よくないものは聞かない。
 で、だんだん世界が狭くなる。いや、もともと広くはなかったんですけどね。
 人生の折り返し点にさしかかると、人はそれまで自分に取りこんできたものを、深化させてみたく思うらしい。やたらと外に広がるのではなく、ひとつひとつを大切にして、見てみたくなるものらしいです。
 そこにどんな美しい魂の暗号が隠れているのか。
 知り尽くしていると思っていた季節と世界が、未知の不思議に満ちていることを知る。世界にこめられた愛の鍵のなんと無数にばらまかれていることか。
 もうわたしも若いと胸を張れる年ではありませんが、また新しい学びの段階に、招き入れられたような感じもしています。おもしろいことが始まりそう。
 これからだなあ、何もかも。


(2006年7月、花詩集38号。一応原稿は作成されたが、発行はされなかった。)




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