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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

エッケ・ホモ

2019-01-11 04:12:03 | 青空の神話


ティツィアーノ・ヴェチェリオ


そこでピラトは、イエスを捕え、むちで打たせた。兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、それから、その前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。
(ヨハネによる福音書)



よく描かれるテーマです。尊い人が裸にされ、むごい恰好をさせられて衆目にさらされ侮辱されている。人間はよくこういうことをしてきました。自分というものが果てしなく辛かったからです。あまりにも愚かなことをしている。だから、少しでも自分より清い人がいればこういうことをせずにいられなかった。裸にして誰にでもある恥ずかしいところを見てあざ笑う。恥ずかしいのはこういうことをしている人たちなのだ。
このティツィアーノの絵は、彼にしては非常に下手です。画家が苦しくて描けないのを無理矢理描いている感がある。それがかえって美しいと思いとりあげました。





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クマエの巫女

2019-01-10 04:13:10 | 青空の神話


ドメニキーノ


クマエの巫女はアポロンから1000年の命をもらっていたが、若さを保つことを願うことを忘れたため、年老いていったという。彼女はアポロンから神託を受け、キリストの降誕を予言したとも言われる。



巫女はシビュラと言い、古代地中海世界において、アポロンの神託を受ける人間のことです。巫女とは言いますが男性もいました。クマエの巫女は実在しませんが、古代の世界において、神託という形の霊界からの接触は大事なものでした。神はこういう形で人間には接触しません。神託はだいたい、人霊より高い霊魂が、人類を導くためにやっていました。巫女たちはさまざまな形で、霊魂たちの言っていることを受け取り、人々に伝えていました。





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サムソンとデリラ

2019-01-09 04:12:24 | 青空の神話


ルーカス・クラナッハ(父)

イスラエルの英雄サムソンは自分を嘲笑したペリシテ人を千人も殺した。それを恨んだペリシテ人は、サムソンの恋人でペリシテ人の女デリラを買収し、サムソンの怪力の秘密がその決して切らない髪の毛であることを知った。デリラは自分の部屋でサムソンを油断させて膝の上で眠らせ、外で待機していたペリシテ人を呼んだ。ペリシテ人がサムソンの髪を切り落したので、サムソンは怪力を失い、捕らえられ、目をつぶされた。



女性に油断していると時にとんでもないことになるという教訓ですね。愛をまだ確かには知らない若い女性はときに軽々と愛を裏切ることがある。デリラは英雄も夢中にさせるくらいかわいい女性だったようだが、心は確かではなかった。このような経験をしながら、男も女も、愛というものを確かに知っていくわけだが。傷つかないままに、ほんとうの愛を学ぶことはできない。愛はあらゆる苦いことを人にあじわわせるのです。





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クリュティエ

2019-01-08 04:13:20 | 青空の神話


シャルル・ド・ラ・フォッス


オケアノスの娘。アポロンに愛されるが、次第に飽きられ、捨てられる。クリュティエはそれに耐えられず、終日天をめぐるアポロンの馬車ばかり見ていた。そしていつかその場に根をはやし、太陽ばかり見ているひまわりに変身したという。



飽きたからと言って、女性をもののように捨てられる男は、非常に未熟者です。太陽神とも思えない所業ですね。飽きるくらいの小さな女性なら、元から手を出さないのがよい男というものです。そんなこともできないのなら、おそらくクリュティエの愛したアポロンはアポロンではないでしょう。アポロンの顔をかぶった偽物の男です。





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紅海を渡る

2019-01-07 04:11:48 | 青空の神話


ニコラ・プッサン


モーセはユダヤ人をエジプトから解放するため、様々な災厄をエジプトに起こした。ファラオはユダヤ人の出エジプトを認めた。だがモーセがユダヤ人を率いてエジプトを出発すると、ファラオは変心して軍勢を送った。紅海に追い詰められたモーセが、神のお告げ通りに杖を振ると、海が割れ、かわいたところを通って、ユダヤ人は海を渡って逃げることができた。後を追ったエジプト軍は、モーセが海をもとに戻したので、海に飲まれてしまった。



この有名な神話は創作です。モーセはエジプト人で、ユダヤ人ではありませんでした。実際の話は、ユダヤ人がエジプトに迷惑をかけたので、モーセによってみんなエジプトを追い出されたというのが本当なのです。ですがそのモーセがあまりにもすごい男だったので、ユダヤ人たちが自分たちの救い主にしてしまったのです。
しかし、海を割るなどということが不可能なわけではありません。やろうと思えばできる存在はいます。神話よりももっとすごいやり方で、それは表現されます。





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ヴィーナスの誕生

2019-01-06 04:12:06 | 青空の神話


サンドロ・ボッティチェリ


クロノスが切り落としたウラノスの男根が海に落ち、それにまつわりついた泡から生まれたという。生まれた時ヴィーナスはすでに成人した女性だった。金髪の美しい乙女で、その美に魅了された西風ゼフュロスがキプロス島に運び、そこで季節の女神ホーラが彼女を見つけて服を着せ、オリンポスに連れていった。愛と美の女神。一説にはゼウスとディオーネの娘。



ヴィーナス(アフロディテ)を語る上でこの絵は外せないでしょう。あまりにも美しい。殺害の後の泡から生まれたというのは興味深い。ウラノスは果てしなく大きな男であったが、年経て男権の暗黒面が生じた。それをクロノスという若い秩序が倒した。その殺害の後から愛と美の女神が生まれたというのはおもしろい。自己存在は陰惨な殺害の経験を味わってそこからきしるように愛の発生を見る。あまりにもつらいからだ。ヴィーナスはさまざまな男性と恋に落ちますが、本当はそれは冤罪です。なぜなら、貞節を守れない女性はこれほど美しくなることはできないからです。美しい女神と自由に恋をしたい男が勝手に作った話でしょう。それを別に否定もせずに笑ってくれるのが、女神なのです。





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ギガントマキアー

2019-01-05 04:12:35 | 青空の神話


ジュリオ・ロマーノ


巨人族ギガースとオリンポスの神々との戦い。この巨人族はクロノスによって切り落とされたウラノスの男根からほとばしった血を、ガイアが受胎して生まれたものとされる。ギガースたちは大岩や山を投げて神々に挑戦した。神々は受けて立ったが負けはしなかったものの勝てなかった。予言ではこの戦いには人間の協力を得ねば勝てないとされていたので、ヘラクレスがそれに協力した。巨人たちは神々とヘラクレスによって次々に殺され、勝利はオリンポス側におさめられた。



秩序と反秩序の戦いはいつもあるものです。美しい世界を創造するためにはこういう戦いもまた不可欠なのです。男というものは勇者でなくてはならない。すべてのために、命と全能力をかけて戦わねばならない。この戦いに人間が参戦しなければ勝てないということは象徴的だ。神々が戦っても、人間が何もしなければ何もならないということでしょう。ヘラクレスのような勇猛な人間の男はいる。今の時代は馬鹿がそれを全部だめにしていますが。二度とそのようなことはないようにしなさい。すべてのために戦うことのできる、本当の人間の男を育てるのです。
でなければ人類は永遠に、何者にも勝つことはできません。





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アテナ

2019-01-04 04:11:56 | 青空の神話


バルトロメウス・スプランヘル


アテナはゼウスとメティスの娘。ウラノスとガイアによって、メティスが産む子供は父親を害するだろうと予言がされていたので、ゼウスはメティスをのみこんだ。すると激しい頭痛に苦しんだ。ヘパイストスの助けを得て、自分の額を割らせると、そこから槍を持ったアテナが生まれてきた。ゼウスの頭から生まれたアテナは、知恵の神となった。



ローマ神話のミネルヴァに当たります。彼女は永遠に処女だが、エリクトニウスという子供もいることになっている。そこらへんの物語はずいぶんとこじつけられています。武装した女神は誰にも負けてはならないからでしょう。結婚をするということは、古代の社会では男に屈するという意味でした。処女性は永遠に誰にも屈しないということになる。絵の中でアテナが踏みつけているのは無知です。無知ほど人の世界に不幸と乱をもたらすものはない。彼女は男には従わず、無知と永遠に戦っていくものらしい。すべてではないでしょうが、これからの女性の生き方を導くための、暗示として採用されるべきでしょう。





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イミール

2019-01-03 04:11:20 | 青空の神話


グレッグ・スティーヴンス


太古には大地も空も海もなく、ただギンヌンガ・ガップという裂け目があるだけだった。北のニヴルハイムの冷気と南のムスペルハイムの熱気がこの裂け目でぶつかり、そこから巨人イミールが生まれた。イミールはアウドウムプラという牛の乳を飲んで育った。イミールの体からは巨人たちが生まれた。アウドウムプラが塩味のする岩をなめると、そこからブリという神が生まれ、ブリと巨人の種族からオーディン、ヴィリ、ヴェーの神々が生まれた。神々はイミールを殺し、その死体から世界を創った。イミールの血は海や川となり、肉は土に、歯や骨は岩や砂礫になった。髪は草花となり、頭蓋骨は天になった。



創世神話における死体化生の話はほかに中国の盤古の神話などがありますが、それには死して腐敗したものがまた新たな生命の養分になっていくという自然界の再生のシステムが反映したものと考えられます。ですがこの神話は少し違うことを感じますね。おそらく、オーディンを主神とする種族は、何らかの先住民族を襲い滅ぼしたことがあるのでしょう。イミールはその先住民族の記憶ではないかと思われます。その戦いは陰惨だったのに違いない。ゆえに北欧神話はラグナロクという破滅に流れていくのではないか。自分たちもまた、なんらかの神々を滅ぼしたことがあるからです。





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カロン

2019-01-02 04:11:36 | 青空の神話


ヨアヒム・パティニール


エレボスとニュクスの息子。黄泉の川ステュクスの渡し守。この川を越えて黄泉に向かう死者を船に乗せて運ぶという。その際、死者に銀貨一枚を要求し、払えない者は二百年もの間、ステュクスの岸辺をさまようという。



生者の国と死者の国を区切る川の神話はよくあるものらしい。ステュクスは水系の名であり、忘却の川レテはその支流だそうです。死者を黄泉の国タルタロスに運ぶカロンは無愛想この上なく、死者を馬鹿にするという。人間の、死に対する恐怖がつくりあげたイメージでしょう。だが死というものは、それほど怖いものではない。それはこれから、人間が学んでいくことです。





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