読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

カーリン・アルヴテーゲン『裏切り』

2024年10月05日 | 読書

◇『裏切り(原題:SVEK)

    著者:カーリン・アルヴテーゲン(KARIN ALVTEGEN)

    訳者:柳沢由美子   2006.9 小学館 刊 (小学館文庫)

   

 
  「きみといても、もう楽しくない」
  この一言が悲劇の始まりだった。
  家計の中心である妻エーヴァ35歳、生活の全てを妻に依存する夫ヘンリック。妻
    に負い目を感じる夫は不倫に走る。
  夫の不倫相手が息子の通う保育園の保育士リンダだと知った妻は激怒し二人に復
 讐を誓う。

  夫の不倫で頭にきたエーヴァはパブで知り合った若者と初めての情事に走る。こ
 の若者ヨーナスにとっても初めての体験で自分好みの彼女に夢中になる。
  互いに一度だけの情事であったがヨーナスは彼女の名前と住所を探しだす。ヨー
 ナスはかつて片思いの女性を水死させようとした過去のあ るパラノイア(偏執症)
 だった。
  エーヴァはリンダに致命的打撃を与えるべく保育園に侵入、リンダのパソコンか
 ら園児の男性保護者宛に熱烈なラブレターを送り(原文はリンダからヘンリック
に宛てたレター)リンダを窮地に陥れる。
  初めての情事の相手に夢中になった男は彼女の住所を突き止め夫婦間が離婚の危
機にあることを知りエーヴァをわがものにする策を練る。
  パラノイアに魅 入られたエーヴァは蜘蛛の巣に囚われた蝶のごとく破滅の水底に
 沈んで行く。

  この本のストーリーの展開は主としてこの3人の心理状態を緻密にかつ交互に追
 うスタイルであるが、 信頼関係を失った夫婦の疑惑と不信、混乱と期待、絶望と攻
 撃など感情の動き、パラノイアの偏執的な感情の動きと行動が克明に描写されると
 ころが特長である。

                            (以上この項終わり)

 

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咲く花は時を忘れず

2024年10月02日 | その他

◇ 銀木犀の香り風に乗る

  朝雨戸を開けると馥郁とし た木犀の香りがただよってきます。
  このブログ既報2020年10月3日銀木犀の花が咲いたと伝えています。
  猛暑でもなんでも自分の生の営みを忘れてはいませんでした。
  しばらくするとキンモクセイが咲くでしょう。

    

  
               
            (以上この項終わり)

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雫井脩介の『霧をはらう』

2024年09月08日 | 読書

◇ 『霧をはらう

      著者:  雫井脩介            2021.7 幻冬舎 刊

   

    読み初めた当初は単純な法廷ものかと思ったが、事件が複数殺人のため裁判員裁判
なり、国選弁護士の一員となった伊豆原柊平が状況証拠を丹念に拾い集めてい く内に
事件の冤罪性を 確信して行く。そして真犯人の姿がおぼろに見え始め、終盤で一挙

犯人
さがしの結論と犯行の真相が明かされミステリーとして完成する。
 刑
事事件で無罪を勝ちとることが如何に困難なことか。検察の勝率9割9分という日
本の司法制度の中で物証なしの立証で無罪を勝ち取るという奇跡的結果は小説の世界
とはいえかなり甘いのではと言わざるを得ない。

 被告人小南野々花は娘2人の母である。下の娘中3の紗奈が腎炎で入院しているが
同室の小児科患者2名が死亡し、点滴内にインスリンを注入されたのが死因とされた。
付き添いの家族間でちょっとしたトラブルがあってその当事者小南が有力な容疑者と
され逮捕・起訴された。長女の高3の由惟は母ならやるかもしれないと思っていると
ころが厄介である。

 中段、被告の二人の娘と伊豆原ののやりとりは、結論とも深く係わってくるので理
解できるが、度々二人の食事を作ってやるとか、中3の沙奈の勉強を見てやるとか、
国選の弁護士がそこまでやるかという不自然さが残る。また真犯人の犯行動機がいま
いち弱い気がしてこれが気になる点である。
                          (以上この項終わり)

 


 

 

 

 

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ブーゲンビリアを水彩で描く

2024年08月26日 | 水彩画

夏空に映えるブーゲンビリア

  
      clester F8

    一昨年夏に買ってき た鉢植えのブーゲンビリア。6月に思い切って大胆に剪定した。
その後新しい枝が生えて花が咲いた。あかい花弁に見えるのは苞で中にある筒状の白い
のが花。
 花の命は短いので、命が盛んなうちに絵にして残してやろうと手掛けたが、風にそよぐ
度に羽のような花弁(苞)の形が定まらず手を焼いた。
                                    (以上この項終わり)

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中山七里の『 絡新婦の糸』                                                       」

2024年08月16日 | 読書

◇ 『 絡新婦の糸』(警視庁サイバー犯罪対策課)

     著者:中山 七里   2023.11 新潮社 刊 

 

 警察庁にサイバー対策の組織(サイバー警察局)が設置されIT人材を求めてるという記事を読 を
んだ記憶がある。 
 さすが時代の寵児中山先生、こうした時代性があるテーマを放っておくはずがない。先頃著名な
暴露系ユーチューバーが脅迫、名誉棄損等の罪で訴追され断罪される事件があった。 
 当節匿名で自由に自分の意見を開陳できるSNSという媒体のなかで、いい気になって根拠のない
情報を元に誹謗中傷を重ねる者が後を絶たないが、SNSが公共空間であり、発言には責任を負わね
ばならない。状況によっては相応の咎めを受けるという話である。

 この作品でも「市民調査室」というアカウントで食いレボや旅レポなどで当たり障りのない話題
でフォロワーを増やし、人気あるインフルエンサーとなるや、やおら狙った個人や組織のフェイクニ
ュースを流し拡散させた上で対象者を悲嘆の底に陥れ、あるいは利益を得る。
 この「市民調査室」の動きに興味を持ったのが警視庁「サイバイー犯罪対策室」の延藤慧司(多
分警部)。

 まず最初「市民調査室」のターゲットになったのは老舗旅館「雅楼園」。最近料理の質が落ちた、
それで客数が減り近々廃業かというフェイクニュースを流し経営不安をあおる。TVなどのマスメデ
ィアで話題となると密かに株式市場でカラ売りなどで荒稼ぎをする。
 こうした経済犯事案になると捜査2課(刑事部)など他部署と の情報共有も必要になる。

 最終段階で「市民調査室」のアカウントが特定される。意外な人物であったが捜査情報のだだ漏
れが疑われた時点でほぼ見当がついていたので意外でもない。 それにしてもいかにも安直に過ぎる。
サイバー犯罪対策室の活躍ぶりもいまいちで存在感が薄く食い足りない。


 SNSに流通する膨大な言葉は思考を奪う。集中力を失しない、思考停止に陥り,他者への攻撃的
態度が増す。SNSの負の局面である。
 
因みに初めてお目にかかったが、絡新婦はジョロウグモと読むらしい。不勉強でした。 

                                 (以上この項終わり)                                   

                                 

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