読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

香納諒一の「虚国」を読む

2010年06月27日 | 読書

ハードボイルドの典型 「虚国」 著者:香納諒一 2010年3月小学館刊  
   出版直後市の図書館に予約をしていたが、漸く順番が回って来た。
   廃墟に魅せられたカメラマンが、さる半島の地方都市にやってくる。
   払暁の廃墟、廃業し荒れ果てたホテルを撮った主人公辰巳翔は、その一室
  で女性の死体を発見する。
  「それはちっぽけな町のちっぽけな事件のはずだった・・・」と本書の帯は書い
  ているが、地方空港建設計画が進行中で観光ホテルがあるくらいなのだから
  決して「ちっぽけな町」ではないだろう。

   被害者はフリーライターで、辰巳とこの街に一緒に来た親しいやはりフリー
  ライターの女性・上原が面談した相手だった。
   そのうち上原が何者かに襲われ重傷を負う。
   辰巳は過去にやらせ写真の濡れ衣を着せられて一時業界を干され興信所
  調査員をしていたことがある。親しい上原が襲われたこともあって、辰巳は被
  害者の元夫である地元の新聞記者と調査に乗り出す。

   事情を探っていくと空港建設推進派と反対派、建設業者と暴力団、地方政財
  界の黒幕などが浮かび上がる。地方都市のこととて関係者の数人がすべて同
  じ高校の同級生といった粘っこい関係が事件を複雑にし、読む側としてはいさ
  さかしんどくなる。
   いかに田舎特有の閉鎖社会とはいえ被害者とその元夫(新聞記者)、市民
  運動家、建設会社社長、警察の捜査担当刑事がみんな同級生というのは、
  いかにも不自然な設定だ。
   物語りの組み立ては精緻で複雑であるが、肝心の空港建設計画とか闇社会
  と建設業界の癒着とか事件の背景ともいえる姿がさっぱり浮かび上がってこ
  ない。単なる事件関係者の属性に止まっているのはどういうことか。
   組織的ではないものの、警官がカネに汚染されていたり、カネのために職務
  を枉げる場面が出てくるが、これとて最近のだらけきった職業観の一端と見れ
  ば単に「己が欲得に溺れる人間たち」の一人に過ぎない。

   「死にかけた海辺の町に持ち上がった空港建設計画」、「疲弊する共同体、
  軽んじられる命、己が欲得に溺れる人間たち」、「公共事業は悪なのか」
  「希望の光すら見えてこないこの国の断片を描く」・・・
   本の帯に書かれた惹句は思わせぶりだがこの本の内容を反映していない。
   この惹句は物語の本流に殆ど関係ない。読後最後に分かるのは「カネ」への
  欲望なのだ。そうした意味では惹句の「軽んじられる命」と「己が欲得に溺れる
  人間たち」だけは内容を正しく伝えている。

   ハードボイルドの主人公によくあるキャラクターであるが、辰巳は育ちが薄幸
  であったが故に家族の愛が信用できず、少しひねくれた人生観を持っている。
  初めて普通の幸福な家庭を築けるかもしれないと思わせる女性上原に出会え
  た。相思相愛の関係にあると思った女性が、実はほかの男の方を愛していた
  と知って、失意のまま街を後にする。
   ここだけがハードボイルドのスタイルを忠実に踏襲していて安心できる。 

   ところで本書の「虚国」とはいったい何を意味しているのか最後までわからな
  かった。
   虚国は造語だと思うが、言葉通りに解釈すれば「虚しい国」か。
   本の帯にある「希望の光すら見えないこの国の事件を描く・・・」がヒントになり
  そうであるが、前述のようにこのような日本国の恥部や暗部が事件の本質では
  ない。そのような著者の嘆きや失望が伝わってこない。
   本書は2005年から2007年にかけて「文芸ポスト」に連載された作品を、全面
  改稿し342ページを書き下ろし付け加えたという。前の題名は「蒼ざめた眠り」。
  この方がハードボイルっぽいし、分かりやすい。

       

   (以上この項終わり)
     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

落花生の花咲く

2010年06月26日 | 畑の作物
播種後43日目の落花生
 5月12日に種を蒔いた落花生は昨日(6月25日)数本の株に花が咲いた。
 花が咲くと花芽から根が下がり(子房柄という)、それが土にもぐり豆を結ぶ。
 「落花生」または「地もぐり豆」の所以。

  花が咲いたら追肥と土寄せ(中耕)を行うべし。ということで暑い中株と株の間
 に化成肥料をばら撒き、土寄せをした。おかげで少し安定していた腰の痛みが
 ぶり返し閉口した。

  ついでながら枝豆が結実し、インゲンもどんどん出来て食べきれない。

  
   落花生の花

  
    実を付けた枝豆

  
    インゲンの花

  
(以上この項終わり)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

季節の花・あじさいを描く

2010年06月24日 | 水彩画

ガクアジサイ(額紫陽花)を描く
  この時期の花といえば「あじさい」が代表格。
  アジサイ科アジサイ属とする分類もあるが、ユキノシタ科アジサイ属とする分類
 もある。
  一般に西洋アジサイが多く親しまれているが、原種は日本原産のガクアジサイ。
  額紫陽花は中央の細かな両性花を、大きな装飾花が囲んでいる。この様子が
 額のようなので「額紫陽花」と呼ばれる。
  花とみられているのは花弁ではなく「萼(がく)」。よく観察すると萼にも葉脈のよ
 うな筋が入っている。

  庭には西洋アジサイと額紫陽花があるが絵にしやすいのは「額紫陽花」。
  まだ咲切っていない枝を4・5本とって花瓶に差した。葉が大きくたっぷりとして
 いて、花を惹きたてるので葉の勢いも描き込んだ。
  同じ木でも日当たりその他で花の色が随分違うので本当は中心となる2・3の
 花を丁寧に描いて、あとはあっさりと仕上げようと思ったがなかなかそのような
 思惑通りにはいかなくて、ついみんな同じ調子で描いてしまう。性格はなかなか
 治らない。

  葉っぱは緑色なのだが、前面と背後の葉で色合いは違う。遠い色はペインズ
 グレイを主にした。前面に近いのは少し緑色を強くした。
  いつもながら背景色に悩んだ。薄いイエローオーカーにしたが、後で淡いイン
 ディゴ辺りが良かったかなと反省した。葉っぱにペインズグレイを使ったので、
 同系色になってしまうのを懸念したためであるが、慎重に考えてから塗るべき
 であった。

    
    clester  CB-F8  

        (以上この項終わり)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

畑の作物は今

2010年06月17日 | 畑の作物

茄子とトマト
  梅雨入りする前しばらくは毎日のように畑に水遣りに通った。
  幸い歳を食って眼の覚めるのが早くなったので、5時半頃に起きだして、20L
 入りのポリタンクに一杯の水を入れ、自転車の後ろにくくりつけて運ぶ。

  今頃水を欠かせないのは「しょうが」。それに茄子もトマトも。折角追肥を施し
 ても水がないと栄養分が浸透しないので多少は水遣りしないと。

  やっと一昨日から雨になって水遣りをしなくとも良くなって、やれやれ。
    前回報告(6月1日)から2週間ばかりでけっこう成長している。

 
    
        第1号は収穫済み                  花をつけたきゅうり

     
           プチトマト                           中玉トマト

     
            中玉トマト                トマトの赤ちゃん(中玉)ウズラの玉子大

       
       茄子(千両)2番手        インゲンの花             そろそろ採りごろ

        
      落花生は順調          早くも花芽が付いたおくら

   
                   枝豆

   (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本橋から18里・十八里最中

2010年06月09日 | その他

間々田宿の銘菓
  昨日妻は栃木県野木町に住む友人Kさんとの定期会合で東武野田線の運河
 駅に程近い「新川」に出かけた。ここのフランス料理がすっかり気に入って何度
 も出かけているが、今度も2時間、食事をしながら楽しくおしゃべりをして来た。
 (実は逆で、楽しくおしゃべりをしながらついでに食事をしたのが真相だと思う。)

  「まあ聞いてよ。今日は珍しい経験をしたのよ。」といささか興奮気味で報告。
  何かといえば、駅を降りたとき「帰りの切符を今買っておいてください。」と言わ
 れいったい何のことかと思っていたら、帰りに白装束の人たちを見て、はたと気
 がついた。ここには「○○○○」という某新興宗教の本部があったのだ。この教
 団は、東京理科大と並び運河駅の最大の利用客。「折角の機会だから中を見
 ようよ。」と好奇心には勝てず広大な教団の敷地に堂々と侵入(?)したらしい。

  「信者ではないのですが?」と断りを入れて入ったというので、正確には侵入と
 は言わないかも知れないが、多分月例会かなにかで、白装束の信者が集まった
 中に、無謀にも積極的に紛れ込んだわけだから、うさんくさい輩と見られても不
 思議ではない。面白がって敷地内の滝とかさつきの植木とかを携帯で撮ってい
 たら周りの信者たちがジロジロ見ている。「間違って拉致でもされると困るから、
 止めてよ」とKさんが必死になって止めるもんだから「宝物殿らしきものがあって
 見たかったけどKさんがねエ・・・じゃ写真をと思ったけど、恐いから止めてよとい
 われたから撮れなかったわ。」と、滝とサツキの写真を見せられた(第2代目の
 教祖様は某国出の方とかで拉致の心配をしてもあながち的外れではない。)。
  調子に乗ってバチバチ写真を撮っていたら、拉致はされないにしても携帯は没
 収された可能性はある。
 慎重派のKさんと一緒でほんとによかった。

  そのKさんから隣町間々田の銘菓「十八里最中」を戴いた。
  合併前は間々田町といったが、日光街道(正式には「日光道中」と言って、幕
 府道中奉行の管轄する「五街道」の一つ。)の「間々田宿」がここにあった。
  その間々田宿は日光街道の基点日本橋と終点日光東照宮の中間地点に当
 たり、丁度双方から18里なのだという。
  で、「下野風土菓 乙女屋」さんは「十八里最中」を考え出した。形は日光の神
 橋と日本橋の橋の「擬宝珠(ぎぼし)」を形どっていて面白い(つぶ餡)。
  何度も戴いたが、いつ食べても飽きない。

   

    


      もちろん「乙女屋」さん謹製のお菓子は十八里最中だけではない。

   *栗姫  *下野風土記  *梅味蕾  *きんかん娘  *栗ドラ  *梅ドラ
   *わたらせ  *玉まゆ  *しなもん  *乳菓  *幸せの鈴  *マロンパイ  
   
   *乙女柿   *思川サブレ  *ひまわりサブレ  *銀杏サブレ 
   
   *カステラ  *羊羹  *くずきり  *ゼリー 
   
   *秋桜(どんなお菓子かな)
   *あさつゆ(〃)
   *乙女の祈り(興味がありますね)
   *蛇まつり(食べたい人がいますか)
   *提灯もみ(どんなもの?)
   *るかんた(?)
  

  (この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする