◇『任務の終わり(上)』(原題:END OF WATCH)
著者:スティーヴン・キング(STEPHEN KING)
訳者:白石 朗 2018.9 文芸春秋社 刊
おなじみのスティーヴン・キングの「メルセデス・シリーズ」第3弾。
2009年のある日、ブレイディ・ハーツフィールドという異常者がダウンタウンの市民
センターに集まった求職者の群れに盗んだメルセデスベンツを暴走させ、突っ込むとい
う事件があった。死者8人、重傷者15人という惨事だった。その後ブレイディはコンサー
ト会場で大規模な爆破事件を起こそうとしたが直前にホーリーに阻止され、脳に重傷を負い
脳神経外科クリニックに入院している。
これがシリーズ第1弾『ミスター・メルセデス』。
それから6年。重傷者のひとり、胸から下が麻痺した女性マーティン・スト-ヴァーの母
親が彼女を薬物で死なせ、自ら自殺した。見かけ上は介護に疲れ道連れに心中したように見
えるが、警察を退職しホーリーと共同で探偵事務所を構えたホッジスは、かつての相棒ポー
リーの配慮でこの事件の現場に赴く。そしてホーリーは些細な点から自殺に違和感を覚える。
マーティン・スト-ヴァーの母親が自殺したという浴槽近くのコンセントには、充電中の
旧型のゲーム・マシン「ザ・ピット」があった。刑事のポーリーとその相棒イザベル(ホー
リーはこの女性刑事ととことん性が合わない)が見逃した証拠物件で、事件の重要なカギで
ある。
定年間近のポーリーは早く自殺事件で片づけたい。ホッジスはブレイディ・ハーツフィー
ルドは脳の損傷が回復していて仮病を使っているの踏んでいる。最近は検察側も真剣に経過
観察もしていない。そんなクリニックで最近奇妙な出来事(看護師らの連続自殺など)が起
きており、周りはバビノー医師の不審な行動を懸念している。
実は回復過程でブレイディはテレキネシス(Tellekinesis=観念動力)を身に着けていた。
念力でものを動かしたり、人を自殺に追い込んだりする。
いよいよスティーブン・キングらしくなってきた。
一方事件を追うホッジスはこのところ内臓の痛み、食欲不振に苦しめられており、検査の
結果すい臓がんと診断された。余命数か月という宣告。ホーリーにはひたすら隠していたが
ばれてしまった。治療に入る前にこの事件を解明しようと二人は誓い合う。
そんな二人の動静を監視する男が現れた。ブレイディの連絡員。これをZボーイいう。
(以上上巻終わり)
(以上この項終わり)